Dark Cultists
Abd al-Hazir著

ドアに湾曲したナイフが荒々しく突き立てられていることを発見し、私は狂信者たちに居場所を知られたことを悟った。私を酷く苦しめた光景は遭遇してより数ヶ月を経た今になってもありありと思い出される。現在では、彼らが何者なのか私ははっきりと判った。

夜、自然の中でのみ体験することができる絶対的な真の闇が存在する。そんな闇の中でTristramの密林を抜けていると、遠方に同じ旅人が焚いたであろう焚き火を発見し、私はそれを心から喜んだ。明るい焚き火に近づいているにも関わらず、密林の闇よりも更に昏いなにかが私に忍び寄ったように感じられた。なんらかの呪言を詠唱する声が私の耳に届いた。私は恐ろしいと感じながらも何故か留まることが出来ぬまま焚き火の明かりに向かって進み続けた。その声音が聞こえる、おそらくは神聖ではありえないその場所へと向かう私を止めてくれる何者かが存在したとしたら、私は心より感謝を捧げたことだろう。だが私は止まる事無く、それどころか無理矢理開拓された広場を密林深くからしっかりと見られる格好の場所を探し求めていた。

それが私が初めて”闇の狂信者たち”(the Dark Cultists)を見た時であり、その時の彼らは円環状に並んでいた。手に持った松明は彼らが身に纏う複雑なルーンが描かれたローブの上で青白く踊り、不気味な儀式を照らし出していた。私はこの謎に包まれた狂信者たちと彼らの行う邪悪な儀式について聞き及んでいたにも関わらず、その時の私は確かに好奇心に突き動かされていたことを認めなくてはならないだろう。彼らは単調な詠唱を繰り返しており、私は発見される前に逃げなくてはならなかった。しかし、私は青白い虚ろな目をした生贄に注意を奪われた。彼の目に知的な光がなかったのは宗教的な躁状態なものか、或いは薬によってかは私には判らなかった。しかし、彼がたどたどしく円環の中央で跪いた時には、間違いなく知性のかけらも感じさせていなかった。

金で装飾されたフードによって顔を隠した集団の指導者らしき男が進み出たことで詠唱が止められると、彼は謎の言語で朗々と儀式を述べ始めた。黒い衣装を着て皮のマスクを被った筋肉質の巨漢が、生贄の顔にフードをかぶせた。そして一フィートはあろうかという長い釘を取り出した。次に、巨大なハンマーがどのような用途で彼の手に握られたかに私は気づいた。鋭く素早い一撃によって最初の一本が生贄の頭部に生えた。私は絶叫を上げかけ、そして……生贄は一切無言だった。

もう一本の釘が用意された時には私は最早見ていることなど出来なかった。もしも捕まったら、間違いなくその釘は私の頭部に花咲くことだろうと考え、全身が震えた。もう一本の釘が突き立つ嫌な音が聞こえ、私は目を背けた。私の視線はさ迷い、信者のローブに留まった。ローブでは胸が悪くなるような動きで複雑にルーンが絡まりあい渦を巻いていた。私はそれを見て、恐怖を感じた。最早私は正気ではいられないと感じ始めていた。私はこの邪悪なる場所から、場面から逃れようとゆっくりと後ずさりした。私の心は逃げることしか考えられなかったにも関わらず、私はゆっくりと動かざるを得なかった。しかし、最早自制することが出来なくなると、どんな音を立てていようと気にせず、全力で逃げ出した。逃げ出し、走り、倒れるまで私は走って逃げた。そしてすぐに起き上がり、足を動かし、さらに走られるだけ走った。

つい最近、私はNew Tristramについて、その評判を裏切って恐怖なる存在にまるで欠けていたと失望を書いたが、その言葉のようなことは本来無いことを望むべきであったのだ。失望は忌わしい恐怖よりも尚望ましいことなのだ。その晩私が躓いたものは、確かに恐怖そのものであった。

家に戻ると私は心安らぐためと、見たものが本当であったことを確認するためもあって、熱心に悪魔に魅了された狂信者たちについて研究していた。しかし、伝え聞く物語はどれも私を捉えた冷気を更に深くするだけのものであった。私の行動のなにが彼らを警戒させたかはわからない。しかし、私の最も抱いていた恐怖が確かなものとなった。私は既に彼らに目をつけられていたのだ。

知られる限り、これがAbd al-Hazirの最後の著作である。私たちの世界の珍しい事実、奇妙な事実、素晴らしい事実を書き記したことで彼は知られているが、不幸にも昨年来行方不明となっている。

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