地中を駆る殺戮者との遭遇 其の弐 – Encounter With Burrowing Death, Part.2

Abd al-Hazir著

Scavengers

私が後ずさりを始めると、Burroughsは私の襟を掴み力任せに引っ張った。

「al-Hazir、本気でThresherに喰われたいのか?」

そう彼は尋ねると、言葉を続けた。

「そういえば、Scavengersを見たことはあるのかい?」

私は以前にScavengersを見たことがあった。そいつは地中を潜り、死肉を食べる小型の生き物であった。このような生物は大抵の動物とは異なり、非常に攻撃的な性質を持っており、不運な遭遇者に対して襲い掛かるのを躊躇ったりはしないのだ。Scavengersは瞬発力のある四肢を持ち、喉や顔などの急所を狙い飛び掛って来る。解剖学の見地からは、Aranoch砂漠のLeapersと明らかな類似点を持っており、多くの研究者はこのふたつの生き物を同じ系統であると分類している。魔術的に変貌した(ある者は悪魔的に変貌したとも云う)存在が二十年余り前にTristramの地で冒険者たちと遭遇したことが記録されている。Scavengersは私の青年期に置ける忌まわしい記憶の原因となっており、それはもうこの際話す必要は全く無いので割愛する。

「その通りの生き物だ。地中を駆るモノを以って地中を往くモノを捕らえるのさ」

Burroughsは籠のロープを充分な長さ引き出すと、杭にそれを結びつけた。そして長いナイフのようなものを自分のブーツの横に置き、その刃を地面に突き立てた。

「離れているんだ」

ロープを手に持つと籠の横の留め金を外して開き、中に居たものを砂の上に落とした。数匹のScavengerは籠から逃れるためか気が狂ったように暴れた。私はこの邪悪な獣が地面の中へと潜る前に、Burroughsがその首に巻かれたローブを引っ張るのだろうと考え待っていた。

緊迫した空気が流れ、私は無防備のままにさらされているような感覚を受けていた。一体、どのような狂気が私自身をこのような場所に来ることを納得させたというのだろうか?

私は用心のために薄暗い荒野に目を走らせ、砂地の地表に現れるであろうThresherのひれを探した。

全く前兆も無く、突如として地面を跳ね上げるとDune Thresherは全てのScavengerを凶悪な顎に挟み取った。砂が舞い散りDune Thresherは顎に掴んだ獲物をそのままに地面へと再び潜った。Scavengerに繋がれていたロープは一気に張り詰めて音を鳴らした。そして、Burroughsも死へと引き摺りこまれるのではないかと思った。何故なら、どうやってこの巨大な怪物を相手にロープを引き寄せられるのか判らなかったのだ。しかし、私の予想とは裏腹に、彼はロープを抑えようとすらしていなかった。

遥か遠くに張られたロープは、何秒かの後に気味の悪いぶるぶるとした動きをし始めた。

「小さなヤツラはちゃんと仕事をしてるみたいだな」

と、Burroughsは凄みのある笑みを浮かべた。

「もうすぐだ」

更に時間が経つと、ロープの動きは小さくなっていた。Burroughsはロープを手に取ると引っ張り、岩の上に引き上げたことで、私は全てを目にすることができた。Dune Thresherは丸ごとScavengerを飲み込んでいた。だがScavengerは、消化液によって死ぬ前に脱出しようと、Thresherの胃を掘ろうとしたのだった。一匹のScavengerはまだ辛うじて生きており、まだThresherから逃れようと消化液に溶かされながら空気を掻いていた。私は嘔吐した。

Burroughsは私に嘲笑を向けながら、Dune Thresherの三角形の頭部を切断すると講義を始めた。突き出た骨ばった低い顎による地面への力学は、この形状によって砂の下をThresherはなんの労苦も無く泳ぐことが可能だと語り、そして、私が望むと望まざるに関わらず、更に多くの事を彼は語り始めた。私は小さく頷きながら、一体何時になったら家に戻ってベッドに横になれるのだろうと考えていたのだ。

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