Diablo 3のMonk訳。女性キャラと男性キャラクタの差が激しすぎるだろ! とか思ったり思わなかったり。

■Monk
Abd al-Hazir著

Ivgorodに秋が訪れて数週間が経ち、冬の吐息が忍び寄り始めていた。夜の帳が広がり太陽が地平線へ没しては、居酒屋へ避難するより他の良い手段などあろうか。私が扉をくぐると、その中はある種の緊張感に満ちていた。この時間にも関わらず、繁盛している様子は無く、人影はまばらであった。少人数が部屋の隅のテーブルに寄り集まり、部屋の中心に位置している場所にはたった一人の男以外誰も居なかった。

その男は外気温の寒さに頓着していない様だった。男は一見乞食に見えんばかりの格好であり、体にオレンジ色の布を纏った他には何も身につけておらず、半身を露出していた。首には木製の数珠をかけていて、顔は顎鬚以外は全て剃り落とされていた。そこで私は気づいた—-額に二つの赤い点の刺青があり、片方はもう一方よりも大きかった。この世界に存在する民族と文化についての知識から、その男が秘密主義であり孤独を好む神の聖なる戦士たるIvgorodのMonkの一人であるとわかった。

私はMonkについての些か誇張されてはいるものの凄い話を幾つも聞いていた。曰く、Monkの皮膚は鉄と化しており、どのような刃や矢でも突き破ることは出来ず、その拳は小枝を折るように容易く石を砕くと云うのだ。私の前に居る控えめな男は、Monkについて聞いた話からはかけ離れているように思えたが、それでも彼を観察したかったがために彼の真向かいの椅子に腰をおろした。すると、彼は手で近づくようにジェスチャーした。

「私と共に座るには充分な胆力をお持ちのようだ。よかろう、友よ」

食べ物が私の前に置かれた。しかし、私はMonkの姿を観察記録することに夢中であり、空腹を感じてはいなかった。彼は一千と一柱の神の存在を話した。神は何処にでも見出される—-炉、川の水、私たちが呼吸する大気にも……。物語としては充分過ぎよう。けれども、迷信とも思えるような観念をばかにする様な行為は、どのような人であれ他者に対してすべきではない。彼は次いで精神的、肉体的な鍛錬によって心と体とを神の公正なる器具へと昇華させる果て無い訓練の話を語りだした。私にはそこまで必要なのかとすら思えるが、彼の信ずる千と一の神は彼にそれらの意志を実行するよう求めているというのだ。私は彼に何故剣を初めとする武器を使わないのか尋ねた。彼は答えた、「肉体こそが私の武器である」と。それから手を上げてこつこつと額を軽く叩き、「常に私の心であるようにも」と言葉を加えた。

その時、思いもかけぬ事が起こった。

男の一団が私の本を床に叩きつけると、私を突き飛ばした。そして、ナイフを初めとする武器を手に、テーブルに近づいた。男たちは私の向かいに座っていたMonkの姿を凝視していた。私は来るべき時が来たのだと考え、テーブルの下に隠れた。見えない何かに引きづられるように、男たちが動いた。

Monkは席に端座したまま最初の一撃を加えてきた男の手首を掴むと肩ごしにテーブルの中へと放り投げた。Monkの攻撃に男たちは数瞬戸惑い、その一瞬で彼は席から立ち上がっていた。

そして乱戦が始まった。

Monkはまるで抑制されたエネルギーの塊であり、一瞬の躊躇いも無く攻撃した。彼の攻撃は、今まで私が見たことがない手と足を用いた武術であった。これまでにも酒場での喧嘩などを度々目撃したことがあったが、今ここで見ているものはそれとは全く違う何かであった。彼の一撃毎に骨が砕けるような音と他になにかが混じった音が響き、当の彼は微笑すら浮かべていた。一人づつ確実に、最後の一人になるまで彼は敵を倒していった。

最後の一人はMonkに向かって椅子を投げつけた。Monkは腕の一振りで固い樫の椅子を撥ねのけた。椅子はばらばらになり、破片が辺りに散った。

「惑わされぬぞ、Demonめが」 Monkは唾を吐いた。彼は拳を引いて構えると、何事かを呟いた。白い光のもやが彼の頭部に現れ、それが全身に広がった。彼が叫ぶと、光が放たれた。それが男を打ちのめして居酒屋のドアから外へと吹き飛ばすと、男の皮膚が破れ下から赤い皮のDemonの姿を覗かせた。

MonkがDemonへと突進した。彼の動きは信じがたい速さで、私は目で追うことすら出来なかった。彼の拳が雨のように降り注ぎ、まるで彼が七人も居るかのようであった。Demonはよろめき、倒れた。MonkはDemonの首筋を掴むと、にやりと笑って輝く拳を引き戻した。そして突き放つと、Demonの体は爆発し、燃える匂いが辺りを満たした。

私自身が目撃したのでなければ、到底信じられまい。この比類なき戦士の話は、私が最初に思った程誇張されたものではなかったのだ。

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