Warcraft III - The Frozen Throne


■Introduction Movie

Illidan「裏切り者か。いや、裏切られたのは、未だ追われ、未だ憎まれているこのオレか。盲しいたオレは、他の者には見えぬものを今見ている──運命が時として強いられざるを得ないということを」

 IllidanがNagaに呼びかけると嵐が起こり海が渦巻いた。Nagaが現れ、更に多くのNagaがそれに続いて海面に現れた。

Illidan「今ここに来たれ! 我らに敵対する者たちに破滅を解き放とうぞ!」

■Chapter.1: Rise of the Naga

 Demonlord ArchimondeとBurning LegionがHyjal山の戦いにおいて敗退したものの、Ashenvaleの森の大部分はDemonのエネルギーによって穢されたままであった。DruidとSentinelの努力によって一応の平穏は取り戻したものの、闇の生き物たちは密かに息づいていた。この危険な時にも関わらず、かつてIllidanの見張りを努めていたMaiev Shadowsongは、彼を再び捕らえるべくKalimdorのAshenvaleへと来ていた
 MaievはAshenvaleの東の境界へと訪れていた。大地は未だに穢さるか、燃えたままになっていた。

Maiev「この痕跡はまだ新しいものだわ。でも二手に分かれている……となると、Illidanは何者かの助力を得ているということね」
Watcher「Mistress、如何致しましょうか?」
Maiev「二手に分かれましょう。そちらは森の状況を偵察し、どのようなものであろうと報告しなさい。私たちは海岸沿いを登り、そして合流しましょう。これだけは忘れないで、もしIllidanを見つけたとしても、私たちとの合流を待つように。決して単独で捕らえようとしてはならないわ。今の彼は、半分の戦力で挑むには危険な存在だから」
Watcher「諒解しました」

 Watcherの半分が一方の道へと向かった。

Maiev「残りの者たちは私について来なさい」

 Maievの率いる者たちは、破壊された小さな村を発見した。

Archer「死体がばらばらにされています。Demonが行ったものでしょうか?」
Maiev「Illidanはここを通ったようね。だけど、これらの痕跡は私の知るDemnonによるものではないようだわ。注意しなさい、姉妹たち。Illidanがその傍らにどのような恐るべき者たちを召還したのか定かではないのだから」

 程なくして、Maievは村の近くで船を沈めている幾体かの海の生物とでくわした。

Archer「あれを! あれは、我らが追っていた者に違いありません!」
Naga「忌まわしいNight Elfども、貴様らなど我らNaga種族の相手にもならぬわ!」
Maiev「Naga種族ですって? 幾世紀にも渡って多くの臆病な種族が私たちの怒りを買ったけれど、どれひとつとして生き残ることはなかったわ!」
Naga「愚か者め。我らは地上世界を奪い返し、貴様らの種族を絶滅せしめるであろう!」

 NagaはMaievによって数を減らされるが船は全て沈められてしまい、NagaたちはRuneを使用して村から立ち去った。

Maiev「ここの者たちも他の人たちと同じように殺されているわ。Illidanは、この人たちのために多くの償いをしなくてはならない。私がIllidanを捕らえた後、彼はまたあの独房で鎖に繋がれていた方がどれ程ましだったかと思うことでしょう」
Naisha「これらの残骸を見ると、彼らは船を破壊したようです。何故でしょうか?」
Maiev「わからないわ……けれど、そうだわ、彼らは海に出たのかも──急ぎなさい! 北にはNendisの港があるわ。そこにある船を使えば、Illidanを追うことができる!」

 Maievは程なくして港へとたどり着いたが、NagaとIllidanは先行してそこに居た。Illidanは素早く船に乗り込むと、岸を離れた。

Naga「急ぐのだ、愚図どもめ! 船を燃やせ! 我らが主は追われることを望んでおらぬ」
Maiev「Illidanを再び逃すわけにはいかないわ! 船が全て燃やされるより早く、Nagaどもを倒しなさい!」
Naga「遅すぎたな、Wardenよ。我が主は既に出航なされた。だが主は投獄されていた間に貴様から受けた歓迎に、感謝を返すことをお望みだったのだ。故に、我らはそれを貴様に返すべくここに居る。」
Maiev「いいわ、来るがいい、この化け物どもめ!」

 Maievは船が全て沈められるよりも早くNagaを全滅させた。しかし、港は火に包まれていた。

Naisha「Illidanに追いついたとしても、彼の者を倒すことができるのでしょうか?」
Maiev「Illidanが強力な存在となったことは間違いないわね。彼はGul'danの頭蓋骨のエネルギーを得て、Night ElfでもDemonでも無い存在へと変わった……」
Archer「しかし、何故Naga種族は私たちに対してそれ程憎しみを抱いているのでしょうか?」
Maiev「判らないわ……けれど、今は見えるものを真実として信じるより他ないでしょう。急ぎなさい、Illidanは私たちに先行して行動している。彼がこれ以上の害悪を振りまく前に、捕らえなくてはならないわ」

 Maievと率いられた軍は一対の船に乗り込み出航した。


■Chapter.2: The Broken Isles

 翌日、Maievの船は不可思議な群島に遭遇した。島には多くの遺跡があった。

Naisha「私たちはIllidanを追って東へと帆を進めましたが、この島は地図のどこにも載っていません」
Maiev「推測だけれど、この島は最近隆起したもののようね」
Naisha「どうしてそう思うのですか?」
Maiev「Naisha、私たちの周りの遺跡……これを私は知っているわ。これは、かつて一万年の昔、大陸が海へと沈む前に築かれた偉大なる都市Suramarに違いないわ」
Naisha「ですが、しかし一体どうして……この島が海の底から隆起したのでしょうか」
Maiev「世界には深海から島を隆起させる程のパワーがもうないでしょうけれど……何にせよこの謎については後々考えれば良いことだわ。上陸し、野営地を設営しましょう。落ち着いた所でIllidanの痕跡を見つけましょう。さあ、姉妹たち、Illidan探索のために野営地を設立しなさい」

 この仕事の間に、Drak'thulという名のOrcから依頼を受ける。彼は、死せるOrcを強制的に戦わせる幾つかの穴を破壊するよう依頼する。Drak'thulが何故ここにいるのかを当初語らないが、Maievが目的を果たしてDrak'thulの所へと戻ると物語を語ってくれる。

Drak'thul「感謝する、異邦人よ。我が言葉を聞いて欲しい。20年程前に、偉大なるWarlock Gul'danは海底からこの島を隆起させた。彼はDark Titanの遺骸を封じた古の墓所を捜していた」
Maiev「Sargerasですって! それは、Legionの創造者のことなの!」
Drak'thul「左様。Sargerasは敗れた後、幾年にも渡って海中の墓所に封じられていた。Gul'danは、その墓を開封することでDark Titanのパワーを得られると信じておった。彼の行いによって、我らの一族は狂気のDemonたちによって引き裂かれ殺された。以来、虐殺された朋友の霊に追われてこの島をさまよっておるのだ」
Maiev「Drak 'thulよ、あなたが語った話は私たちの至急の問題と同じくらいに興味深いわ。だけれど、あなたの苦悩の種である霊どもが静まったのは残念なことだわ。あなたはこの場所を開封した者たちよりもなお愚かしい」

 一方IllidanはSargerasの墓所を発見していた。

Illidan「ついに見つけたぞ! これがSargerasの墓所か! 頼れる者たちよ、ここに残り入口を守れ。愚かなWardenがこの島にたどり着けたとしたら、必ずやオレたちの後を追って来るだろうからな」

 Maiev、Naisha、そして配下のHunterたちは少し送れてたどり着いた。

Naisha「Illidan! やはりここに居たか! Nagaどもを倒さねば、彼を追えないということか!」
Maiev「私たちは遥か昔にIllidanを地の底に閉じ込めたわ。再びそうするだけのこと」

 Illidanは姿をDemonへと変貌させ、墓所を破壊するとその中へと入った。Maievとその配下は、手早くNagaを撃退した。

Maiev「急ぐわよ、姉妹たち! Illidanは如何なる犠牲を払っても止めなくてはならないわ!」


■Chapter.3; The Tomb of Sargeras

 Maievとその配下は、Illidanに遅れて墓所へと入った。

Naisha「嫌な予感がします。余りに静か過ぎます。まるで罠の中へと自ら進んでいるような……」
Maiev「それでもなお行かなくてはなわないのよ、Naisha。Illidanがなにを探しているのかは判らないけれど、もしそれを彼が見つけたとしたら……ちょっと待って、これは……! 見なさい! これは……Orcish Runesだわ!」

 それは、Gul'danによって書かれたものであり、20年前に最初に墓所が開かれた時に書かれたものだった。

Naisha「なんと書かれているのです?」
Maiev「どうやら、Gul'danは墓所の深部への旅程を記録していたようね。このRunesはそれを示すものだわ」

 回想が始まり、Gul'danが7人のShamanと共に墓所に居る。

Gul'dan「急げ、愚か者どもが。散開しろ、全ての通路を調べるのだ! 墓所の守護者が目覚める前に、玄室にたどり着かねばならんぞ!」

 何処からかなにかの咆哮が轟き、Shamanの一人が逃げ出した。Gul'danはそれを殺した。

Gul'dan「意気地の無い臆病者が! 急げと我は云ったのだぞ!」

 ShamanはGul'danの言葉に従って方々へと散った。Gul'danは先へと進んだ。

Gul'dan「Sargerasよ! 我は汝の残されしパワーを手に入れるぞ! そしてこの愚かしい世界を我が前に跪かせてくれよう!」

 回想が終わる。

Maiev「この忌まわしい場所でGul'danとその配下が何を呼び起こしたのはわからないけれど、用心に越したことはないわね」

 Maievが更に先へと進むと、もうひとつのGul'danのRunesを発見する。

Maiev「これも、Gul'danの刻んだものだわ! 興味深いわ、Warlockの物語の続きのようね」

 回想が始まる。

Gul'dan「忌々しい、低脳の無能者どもめ! 奴ら全員死におったか! だが、我はまだ死ぬわけにはいかぬ。我が力は充分に──」

 哄笑が響き渡る。

Gul'dan「この笑い声は……Sargeras、汝なのか? 我をからかっておるのか? Demonよ、我は何者が笑っておるのか最後には知るだろう。我が我がために、汝の燃ゆる眼を手にする時にこそ!」

 回想終了。

Naisha「Gul'danは"眼"のことに言及していましたが、何なのでしょう?」
Maiev「アーティファクト以外に考えられないわね。Gul'danを魅了するだけのDemonの力を含んだ品なのでしょう」

 Maievは更に先へと進んだ。MaievはAzsharaの像に気づいた。AzsharaはかつてSargerasの配下となった者であった。

Maiev「古のかつての偉大なる女王Azsharaの像……だけど、この像は変だわ。AzsharaはSargerasと接触して私たちを破滅させるBurning Legionを呼び寄せた……けれど……彼女に尻尾があったなど記憶にないわね」

 Nagaたちが現れ、その中からリーダーが前に進み出る。

Lady Vashj「遠方よりはるばるよう来たな、卑小なるWarden殿。そなたの誇るNight Elfの正義とやらも、ここではその権利を持ちえぬぞ」
Maiev「Nagaの魔女よ、お前たちは私たちの正義のなにを知ると云うの?」
Lady Vashj「あら、まあ、なんと愛いことよの。妾たちNagaはかつてNight Elfであった! 妾たちはかつてAzshara様に選ばれしHighborneであったが故に、Well of Eternityが崩壊した時には冷たき水底へと放逐されることと相成った! しかしてその身は呪われ、変わり果てた……妾たちは世界に妾たちの場所を再び手にするために、一万年を待った。そして、今、今宵この時、Illidan殿を手助けし、その目的を果たそうぞ」
Maiev「それ以上無駄口を叩くな!」
Lady Vashj「そなたの果敢さは称賛に値するものよな。されど、それはそなたに何ら価値あるものをもたらさぬぞえ」

 Vashjは数体のNagaを残して立ち去った。MaievはNagaを倒して進むと巨大な門の前にGul'danが刻んだRunesを発見した。

Maiev「Gul'danの残したこれは、どうやら窮余の時に記したもののようね。読む限り彼は……」

 回想開始。

Gul'dan「奇襲とは……守護兵どもめ……。我は……死ぬのか……。下僕どもが我を見捨てねば、我は『眼』を手にし──呪わしや、Sargeras! 我はこのようなことになるまで諦めなかったであろう! 我はGul'dan! 闇の化身なり! 終わらぬぞ……このような……」

 回想終了。

Maiev「これは、Gul'danがそうなった所から離れているようね。Runesは段々と弱まっているわ。Gul'danが最後の瞬間にどのような恐ろしい者と遭遇したのかはわからないけれど……」

 Maievたちは門を破壊した。IllidanとVashj、それに幾体かのNagaがそこにはいた。Illidanの前には、光る緑色の物体が浮いていた。

Illidan「遂に来たな、Warden Shadowsong。きっと来るだろうと判っていた」
Maiev「あなたには償わねばならぬ多くのことはあるわ。あなたを再び牢獄へと戻します」
Illidan「愚直さはお前には似合わんよ。オレはGul'danの頭蓋のパワーを得ると同時に奴の記憶をも受けついた。特にこの場所には……奴が切望した闇の宝がある」
Maiev「そうね、Sargerasのパワーなのでしょう。そして、それをあなたは自分のものにしようとしている!」
Illidan「それはオレには届かんな、愚かなWarden殿。だがこれは……この"Sargerasの眼"は、愚かなこの世界からオレの敵を排除するに足る力を持っている。皮肉なことに、お前がその最初の犠牲者となるわけだ」
Maiev「狂ったか!」
Illidan「様々な思いは別として、オレはそれをやるさ。お前は何世紀にも渡ってオレを拘束し続けた。お前をこの墓所に埋葬するのは順番として正しいことだろう」

 "Sargerasの眼"は墓所を崩壊させ水へと沈め始める。Night Elfたちは巨大なホールの内部に捕らえられた。

Maiev「なんてこと! Shan'do Stormrageに兄弟の裏切りについて告げる必要があるわ。私単独ならここから脱出できるけれど、他の者たちは……」
Naisha「行って下さい! 女神は私たちの来世の道行きを照らすことでしょう」
Maiev「姉妹たち、あなたたちのことはけして忘れないわ。この復讐は必ず。誓って、必ずや!」
 Maievは塞がれた扉を越えるためにBlink技能を使ってそこを越えた。

Maiev「この忌まわしい墓所が海に沈む前に、出口を見つけなくてはならないわ!」

 Maievは怪物たちを避け、塞がれた道を越えて出口へと向かった。


■Chapter.4: Wrath of the Betrayer

 数時間後、Maievは傷つきながらも野営地へと戻った。

Huntress「一体どうしたというのですか? Naishaや他の者たちは何処に?」
Maiev「彼女たちは亡くなった。Illidanは"Sargerasの眼"を手に入れ、私たちの姉妹を生き埋めにするために使ったわ! 彼は残った私たちを殲滅しようとしている! 私たちに残された手段は、Kalimdorへと旅してShan'do Stormrageに警告することだけよ」
Huntress「それは、遅かったようです! Illidanの軍隊が向かって来ます!」
Maiev「今は逃げるより他ないわ。使者を立てなさい! 使者を海岸線に向かわせ、Kalimdorまで船旅をさせるわ。巧くすれば、私たちが全滅する前にShan'do Stormrageと連絡が取れるでしょう! 急ぎなさい、姉妹たち!」

 使者は野営地から出ると、直ぐにNagaの投げた網に捕らえられる。

Huntress「使者が襲われています! 使者を護れ!」
Maiev「Tor ilisar'thera'nal!」

 Maievと少数のArcherとDruid of the Talonが使者を助け、Nagaを倒した。使者とMaievの少数の軍は野営地を離れ、船へとたどり着いた。

Maiev「Eluneよ、使者がShan'do Stormrageの元へとたどり着き間に合いますよう。さもなくば、Illidanを止めることは叶わないでしょう」


■Interlude: Unfinished Business

 MalfurionとTyrandeは、MoongladeにてBurning Legionの爪あとをどうすべきかを話し合っていた。周囲の地面は未だ穢されている。

Malfurion「Nordrassilの根は順調に癒されているようだ。Felwoodもそうありたいものだが、Legionの穢れが永遠に森にその爪あとを遺すのではないかと懸念しているのだ」
Tyrande「Druidたちはなにか考えているでしょうね。多分、YseraかAlexstraszaの力を借りて──」

 Druid of the ClawがMaievの送った使者をMalfurionたちのもとへと導いてくる。

Druid of the Claw「失礼いたします、Shan'do Stormrage、司祭Tyrande殿、彼女があなたがたにお逢いしたいと強く云っておりますもので」
Tyrande「あなたは誰です? それに、何を急いでいるの?」
Runner「私は、裏切り者Illidanを捕らえることを誓ったWarden、Maiev Shadowsongにお仕えしております」
Malfurion「Illidanだと? 説明せよ!」
Runner「失礼ながら、Shan'do、あなたの兄弟は海底より闇の軍を召集しただけでなく、強力なDemonのアーティファクトまでをも盗み出しその手にしました! 我が主は現在Broken Islesで戦っております! 至急の増援を必要としているのです!」
Tyrande「私が行きましょう。Sentinelを率いて、私が」
Malfurion「駄目だ、愛しい人よ。Druidと私とで処理できる問題──」
Tyrande「彼を解放したのは私だわ。私にこそ責任があります」
Malfurion「ならば、共に行くとしよう。この使者の言葉が正しければ、Maievは得られるだけの助けを必要としているであろうから」


■Chapter.6: Balancing the Scales

 翌日、MalfurionとTyrandeは少数の兵を率いてMaievの野営地近くに到着した。Maievは絶え間ないNagaの攻撃に抵抗していた。Tyrandeの偵察フクロウがMaievを見つけた。

Maiev「戦士たちよ、浮き足だつな! 女神は必ずやShan'do Stormrageを遣わせてくださる」

 Malfurionたちは反対側の海岸沿いで船を降りていた。

Malfurion「どうやら問題なく上陸できたようだな。だが、少々目的地を外れて係留したかもしれないな。間に合わなかったと思いたくないが」
Tyrande「私のフクロウが既に偵察に出て、Maievたちの居場所を見つけているわ。彼女たちは攻撃を受けているけれど、そこにたどり着くには森林地帯を越えねばならないでしょう」
Malfurion「Force of Natureが進軍を早めてくれるだろう」

 MalfurionはForce of Natureを使用して森林を取り去った。

Tyrande「急ぎましょう。Maievはそう長時間持ちこたえられるようには見えなかったわ」

 Maievのもとへの進軍の中で、MalfurionとTyrandeはNagaと遭遇し戦った。その間にも、Maievの拠点は破壊されていた。寸前でMalfurionたちは森林を越えてMaievのもとへとたどり着いた。

Maiev「Eluneよ、感謝を! Shan'do Stormrage、やはり来てくれましたか!」
Malfurion「Maiev、間に合って良かった」
Maiev「Tyrande司祭まで来られているとは。それで己の罪悪感が消えるというわけですか?」
Tyrande「Maiev、私はやるべきことを行っただけ。それに、あなたは私に審判を下す立場にはいないわ」
Maiev「あなたがしたことは、見張りたちを殺し、そして裏切り者に自由をくれたことではないか! 捕らえられ閉じ込められるべきはあなたも同じだ!」
Malfurion「二人ともやめんか! まだここは危険な場所なのだぞ。Maiev、どういう状況なのだ?」
Maiev「Shan'do、この辺りの資源は掘りつくされています。Illidanの襲撃に備えるためには、金鉱を見つけて軍備を整える必要があるでしょう」
Malfurion「承知した。早速取り掛かるとしようか」

 Malfurion、Tyrande、MaievたちはIllidanの拠点を攻撃するに足る軍備を整えた。

Illidan「Tyrande! 何故ここに? この戦いは君には関係ないぞ」
Tyrande「Illidan、あなたを解放し自由にしたのは間違いでした。今、そうであったことを確認できます。あなたは化け物へと変わってしまった。Illidan、触れるべきでない力は真の実力の代わりとはなり得ないわ。それこそが、私がMalfurionを好いた理由……」

 Illidan's Nagaは倒れるが、Illidanの姿は無かった。

Maiev「私たちの勝利だわ! Shan'do、御身の傍らで戦えたことを光栄に思います」
Malfurion「Maiev、戦いはまだ終わったわけではないぞ。Illidanの償いはまだ成されておらず、それに、Tyrandeの姿も見えない」

 TyrandeはIllidanを追って森にいた。

Tyrande「姿を見せなさい、Illidan! 最早これまでです!」
Illidan「なんの、まだまだこれからだ、オレにとっての可愛い司祭殿。オレの力を見せられなかったのが残念だ。君にも、そして世界にも、オレを知らしめてやろう! Ash Karath!」

 Nagaが網を投げてTyrandeの動きを封じた。遅れてMaievとMalfurionが到着した。

Illidan「兄弟よ! 何故ここに?」
Malfurion「お前を止めるために来たのだ、Illidanよ。あの時追放する代わりに牢獄へと再び閉じ込めるべきだった! 私はその時よりも弱くなった……だが、そのようなことは問題ではない」
Illidan「オレは新たな主に忠誠を誓ったのだ、兄弟。オレはその御方のためにやらねばならぬ大きなコトがあってな。それを邪魔する者を許すわけにはいかない」

 Tyrandeが網から逃れ、Starfallを詠唱した。Illidanはそれよりも前にその場を離れ、残ったNagagaStarfallによって倒れた。Malfurion、Tyrande、Maievは船で出向したIllidanを海岸から見送ることとなった。

Malfurion「心配するな、愛しい人よ。Illidanが何処に行こうとも、私たちは彼を見つけよう。彼を見つけるのだ」


■Chapter.6: Shards of the Alliance

 三日後、Elfの王国であったWestern LordaeronのSilverpine ForestにMalfuironたちは接岸した。森は奇妙に捩れ、穢されていた。

Maiev「私たちの配下の者たちはすぐにでも動く準備がととのっています。ただ、私たちはIllidanが訪れたこの地について何も知りません」
Malfurion「ここはLordaeronと呼ばれていた場所だ。Hyjal山の戦いにおいて私たちを手助けしてくれた同盟者の故郷でもある。HumanとElf、その双方がUndead軍であるScorgeによって滅ぼされたと聞いている。森林も嘆かわしい程に被害を受けているな。私はここに当分残り、森に入ってこの地との交感を行おうと考えている」
Maiev「わかりました。あなたがいない間、私たちはIllidanの痕跡を探しましょう」
Malfurion「Tyrande、Maiev、あなたたちが共にこの役目のために協力するように。Maiev、あたなの個人的な思いは私の兄弟を発見した後としよう」
Maiev「わかっております、Shan'do。最善を尽くします」

 Malfurionはさ迷い始め、TyrandeとMaievは移動し、やがて野営地へとたどり着いた。

Tyrande「これはAllianceの野営地のようね。最近攻撃を受けたようだわ」
Blood Elven Swordsman「異邦人です、我が主よ! 彼女らはUndeadのようには見えませんが……」
Kael'thas「Ishnu-alah、Night Elf殿。私は王族の血を引く者、Kael'thas。このような所であなたがたの種族と出逢うとは、驚きを隠せません。ですが、何の目的でここに来たのかはわかりませんが、この呪われた地ではただ死と影しか見出せませんからお気をつけを」
Maiev「Ishnu-dal-dieb、Kael'thas。私はMaiev Shadowsong、そしてこちらはTyrande Whisperwind。私たちはここに訪れた強力なDemonを狩ろうと追っています」
Kael'thas「興味深いお話です。私は生憎そのDemonについては存じ上げませんが、最近Dalaranに拠点を置くUndeadを何者かが怒らせました。Undeadたちはその怒りを私たちに向け、昼夜なく私たちを追って来ているのです。私たちはこの拠点を見捨て、Arevass河の対岸に非難しようとしていたのです」
Tyrande「なるほど。手をお貸ししましょう」
Maiev「待って、そんな余裕はないわ」
Tyrande「私たちがあなたを手伝った返礼として、私たちの探すDemonを倒すのを手伝ってくれませんか?」
Kael'thas「我らが信義にかけて」

 Kaelたちを河に向かって護衛すると、Undeadたちが襲って来た。

Maiev「私たちは無駄な時間を費しているだけだわ。私たちの目的はIllidanを探すことだわ」
Tyrande「Maiev、この人たちは私たちの手助けを必要としているのよ! 彼らの同胞は、かつてLegionに敵対した時に私たちを手助けしてくれたわ。その礼を返すべき時なのよ」
Kael'thas「悲しむべきことですが、私たちにはほんの少数の手勢しかありません。Scorgeは、この数ヶ月私たちを激しい勢いで追撃して来ています」
Maiev「Kael、あなたの仲間たちは今何処にいるの?」
Kael'thas「Scourgeは私たちの古よりの故国Quel'Thalasを滅ぼし、誇り高い血統の殆ども失われました。今残った少数の者たちは、殺された人々への誓いのもと、Blood Elfと名乗っています」
Tyrande「あなたの民にお悔やみを。けれども、怒りと絶望に心を飲まれては行けません。残った人々を輝かしい未来へと導くのがあなたの務めでしょう」

 程なくして、道が枝分かれしていた。幸いにも、Kaelはどちらに進めば良いか知っていた。

Kael'thas「友人たちよ、私たちは十字路に差し掛かりました。目的地に近い道にはUndeadの要塞の近くを通らねばなりません。他の道は安全ですが、河を渡るために更に遠回りする必要があります」
Maiev「どちらにせよ、どちらも危険な事には変わりないのでしょう? ならば、近い道を通るべきだわ」

 Kaelたちは河を越える橋へと向かうために村へと入った。

Kael'thas「Pyrewood村です」
Maiev「嫌な感じだわ」
Tyrande「そうね。部隊を停止させない方が良いかしら?」

 何体かのUndeadが村から出て攻撃を仕掛けてくる。

Kael'thas「畜生! 奴ら待ち伏せをしていたのか! 全力で護りを固めろ!」
Tyrande「奴らの数は圧倒的だわ! 奴らが押し寄せてくる」
Maiev「引き返そうにも第二陣が来たわ!」
Kael'thas「これまでか! ここで全滅なのか!」
Tyrande「Kael、部隊を橋を渡って河向こうへ! 私は殿を勤めて橋を護るわ」
Maiev「司祭殿、それは気高い行為だけれど、あなたの力はあれ程の大群に匹敵するものではないわ!」
Tyrande「Wardenよ、女神が私を護りたもう。Eluneは私に力をお与え下さるでしょう」

 Kaelとその配下の者たちとMaievは河を渡った。Tyrandeは橋の中央に陣取り、向かって来たUndeadを倒しStarfallを詠唱した。

Kael'thas「彼女が奴らを押し止めている!」
Tyrande「慈悲深き女神よ!」

 Starfallの強力な破壊力によって、Tyrandeの居る橋が崩壊し始める。程なくして橋が崩壊し、Tyrandeが川下へと流されていく。

Kael'thas「急いで彼女を救わねば! 河を下ればUndeadの地の中心に運ばれてしまう!」
Maiev「お待ちなさい、Kael。Tyrandeは戦士であり、危険は常に心しているわ。私たちは他になさねばならぬことがあるし、無駄な時間は無いわ。ここまで来ればあなたの民は安心なことでしょう。約束どおりここまであなたたちを護った以上、私が探すDemonを狩るのを手伝ってもらうわ」


■Interlude: Malfurion's Vision

 Silverpine Forestで、Malfurionは自然の精霊と交感していた。

Malfurion「この森はAshenvaleよりも酷い被害を受けておる。Scorgeの邪悪な穢れは無数の広さの木々を死滅させた。Druidがいれば良かったのだが──」

 突如Malfurionの世界が揺れた。

Malfurion「うぐおおおおおお! 大地が……ばらばらに……引き裂かれている……この痛みは……耐え難い……! 古よりの森林の精霊よ、願い奉る、我が前に示せ! 大地を何が苦しめているのか、示すのだ!」

 幾体かのWispが飛び出すと、Malfurionを取り巻いた。それらはMalfurionに不毛の凍結地帯を幻視させた。

Malfurion「これは世界の屋根Northrendの凍てつきし大地か! 大陸が引き裂かれているが、一体どうしたというのだ? 何がこのような破壊を引き起こしたのだ?」

 精霊はくるくると踊り、MalfurionにDalaranの都市を幻視させた。そこには、Illidanと"Sargerasの眼"があった。

Illidan「順調なようだな! 何者であろうとも、この"眼"の力に耐えられるものなどいないだろう! 間もなくオレの主の敵は無に返るだろう。さすれば、オレはその代価を得ることができる」

 精霊の示した幻視が消えた。

Malfurion「ありがとう、偉大なる精霊よ。やるべきことは決まった。約束しよう、この裏切りをけして罰さずには置かぬと」


■Chapter.7: The Ruins of Dalaran

 その晩、MaievとKaelはDalaranの外部に野営地を構えていた。Malfurionはこの野営地に急いでたどり着いた。

Malfurion「Maiev! 私たちは急がねばならん。Illidanは世界の屋根たるNorthrendを引き裂く呪文を紡いでいる! 私たちは──待て、どういうことだ、Tyrandeは何処に?」
Maiev「申し訳ありません、Shan'do。司祭殿は死亡されました。私たちはこの集団を手助けし、Undeadに対する同盟者としました。その折り、司祭殿は奮戦なされましたが、私の目の前で彼女はUndeadの手にかかり引き裂かれました」
Malfurion「殺された、だと? ……Tyrande……私の……私は、そこにいるべきだった……」
Maiev「Shan'do、まだです、まだあなたは彼女の復讐を果たせます。共に、私たちと共にIllidanを倒しましょう。それこそが私たちがこの見捨てられた場所に来た、その理由なのですから。そして奴こそが、あなたの失ったものの、失われたその理由なのですから。──Shan'do、こちらはKael'thas殿下、先ほどお話に出た同盟者となった方です」
Kael'thas「初めまして、偉大なるDruid殿。私の配下の斥候が、Illidanとその配下の下劣な蛇種族が破壊されたDalaranに拠点を築いていることを確認しました。彼らは奇妙な儀式を行うために、宝石のようなアーティファクトを使用しています」
Maiev「奴らが"Sargerasの眼"を用いているですって! ですが、何故奴らは世界の屋根を攻撃しようとしているのでしょうか?」
Malfurion「──そのようなことはどうでも良い。奴らは、その儀式を終わるまで生きていないであろうからな。Illidanを完全に止めてやろう!」

 MalfurionとMaievは、軍を率いて"Sargerasの眼"へと進軍した。そしてNaga Summonerたちを打ち破り、呪文を中断させた。Illidanはその場所で捕らえられた。

Illidan「畜生め! 呪文は完成されなかった! 完遂されなかった!」
Malfurion「終焉だ、兄弟よ。お前の下劣な策謀はここにて終焉を迎えたのだ」
Maiev「Illidan Stormrage、無数の生命を思慮無く危険に晒し、そして世界の調和を乱す貴様に対して死を宣告する!」
Malfurion「Illidanよ、君のために多くの血が流れた。今でさえ、Northrendの大地が君の紡いだ呪文で揺れているのを感じる。投獄だけでは最早済まぬだろう」
Maiev「私手ずから葬ってくれよう」

 MaievはBlinkでIllidanのもとへと近づく。MalfurionはEntangling RootでIllidanを拘束した。

Illidan「愚か者どもが! 判らないのか? オレたちが準備した呪文は、お前たちと共通の敵であるUndeadを攻撃するためのものなんだ! オレの目的はIcecrownにあるLick Kingの要塞を破壊することだったんだぞ!」
Malfurion「そのために払われた代価にを気にしないのかね? Tyrandeは死んだのだ!」
Illidan「なんだと?」
Kael'thas「……許されよ、Stormrage殿。その……司祭殿はまだ生きておられるかも知れない! 彼女は河の下流へと流されたが、まだ……最悪の事態を考えるべきではないかも知れ──」
Maiev「黙れ、Kael!」
Malfurion「彼女が裂き殺されたといった! それは嘘だったのか!」
Maiev「──裏切り者の拿捕こそが私たちがなすべきことではありませんか、Shan'do。そして私はあなたの手助けを絶対的に必要としておりました。もしもこの話をしたとすれば、あなたは大儀を捨て彼女のもとへと向かうでしょう。さすれば、私たちは機会を逃すことになります。私は──」
Malfurion「一体誰が裏切り者だというのかな? すぐに彼女を探しに行くとしよう」

Illidan「兄弟よ、オレたちは事ある毎に対立するが、オレが決してTyrandeに害を与えるような真似はしないと信じてくれ。オレに手助けさせてくれ。Nagaは河を探すことができる!」
Malfurion「……わかった、そうさせてもらおう」
Maiev「な、なんですって? 彼が行った全てを見ながら、あなたはこの裏切り者を信頼すると──」

 MalfurionはEntangling Rootを解いてIllidanを解放し、MaievをRootした。

Malfurion「これ以上何も云うな! あなたの処遇は後ほど考えよう。兄弟よ、行くとしよう」


■Chapter.8: The Brothers Stormrage

 一時間後、Arevass河の土手の上でMalfurionとIllidanはTyrandeを探していた。

Illidan「Kael'thas王子はTyrandeが河に流されたと云っていたが、生きていればNagaたちが発見してくれることだろう」
Malfurion「彼らが良い知らせを持って来てくれるのを待っているよ、兄弟よ。しかし、この光景は私の胃の腑をひっくり返しそうだ。一体何処でこのような忌まわしい者たちを見つけたのだ?」
Illidan「オレを信じろ、知る必要はないさ、兄弟よ」
Naga Myrmidon「Illidan様、行方不明であった司祭殿を発見しました。司祭殿とその配下の者たちはUndeadと戦っておりますが、そう長く持ちこたえられそうもありません」

 Tyrandeたちは、少数の兵で戦っていた。傍らには、Ancient Protectorたちが居てTyrandeたちに手を貸していた。

Tyrande「来るがいい、意思無き哀れなる者どもよ、Sentinelの怒りを味わうがいい! Eluneの威光はけして衰えぬ!」

Naga Myrmidon「司祭殿を救うのなら、急がなくてはなりません!」

 Undeadの航空兵力が河の上を飛び、MalfurionとIllidanを越えて行った。

Illidan「Undeadの襲撃部隊か! 奴ら、オレたちを無視してやがる。そこまでするとは……」
Tyrande「狙いはTyrandeか!」
Illidan「奴らの航空部隊が空に溢れてやがる! 奴らにお前の飛翔部隊をぶつけるのは愚策だろうな!」
Malfurion「今は彼らに頼ることはできん! Illidanよ、君はここでTyrandeの居場所を襲おうとするUndeadを防いでくれ。私は下流へと向いそして──」
Illidan「それじゃ駄目だ、兄弟。Nagaとオレならもっと早くたどり着ける。オレが行こう」
Malfurion「君が云うことは正しいが……だが、Illidanよ、君を信頼することは危険を伴うことだ」
Illidan「オレの命に賭けて、彼女を生きて連れ返ると誓おう、兄弟よ」
Malfurion「……信じよう。Ande'thoras-ethil、兄弟よ」

 NagaはTyrandeのもとへとたどり着くためにUndeadと戦い、Malfurionは河の対岸でそれを手助けした。TyrandeはIllidanがたどり着くまで持ちこたえていた。

Tyrande「Illidan! これはどういうこと? 手ずから私を殺すために来たというの?」
Illidan「そうじゃない、オレを信じてくれ。オレは君を助けるために来たんだ!」
Tyrande「私を助けるですって?」

 Illidanがポータルを開いた。その頃、Malfurionは自分の拠点で苛立たしげに歩いていた。。

Malfurion「まだなのか? まだ助けられないのか!」

 TyrandeとIllidanは開いたポータルの前に居た。

Illidan「急ぐんだ! これが最後の機会だぞ!」

 TyrandeとIllidanは開いたポータルを通り抜けた。ポータルの出口がMalfurionの前に開いた。

Tyrande「Illidan、あたなは自らの命を賭けて私を助けてくれた。どういうことなの……」
Illidan「この世界でオレがどのような存在であれ、オレがどのような者であれ、常に君を見守っていることは忘れないでくれ」
Malfurion「Tyrande!」
Tyrande「きっと来てくれるだろうと信じていました!」
Malfurion「愛しい人よ、私は永遠にあなたを失ったと思っていた。もしもIllidanが力を貸してくれねば、実際にそうなっていた事だろう」
Illidan「兄弟よ、オレたちの間には多くの諍いがあった。オレはお前に憎悪だけを長い間抱き続けていた。だが、オレはそれをそろそろ終わらせたいと思っている。今日、この日から──」


■Finale: A Parting of Ways

 暫く後、IllidanはMalfurionの野営地から旅立つ準備をしていた。

Malfurion「Illidanよ、君は多くの苦しみを世界にもたらした。それ故に、決して許すことはできない。だが、君は私の愛しい人の命を救ってくれた。それ故に、私は君を見逃そう。だが、それでも、それでも君は人々を脅かす存在とまたなるのだろうか……」
Illidan「オレはわかったんだ。この世界で地位を望むのはオレの目的では無かった……。オレは力を……ただ魔法だけを求めている。ここには長居し過ぎた。オレは行かねばならん。オレはお前たちを助けたことで、新しい主を裏切ったのだからな。用心に用心をかさねなくば、奴の怒りはオレの命の終わりとなることだろう」

 Illidanはポータルを開いた。

Illidan「さらばさ、兄弟、Tyrande。最早オレたちの道行きが交わることも無いだろう。En'shu falah-nah」

 Illidanはポータルの向こうに姿を消した。入れ替わりにMaievとその配下が現れた。

Maiev「愚か者どもめが! 正義のなんたるかを知らぬのか?」
Tyrande「Maiev、Illidanは犯した罪の償いを果たしたわ! 彼はもう、脅威たる存在ではないわ」

 Maievはポータルへと走り寄るとそこへと入った。Maievの率いる軍もそれに従った。

Malfurion「Tyrande、最早彼女は聞く耳を持たん。追うこと、狩ることの妄執に執り憑かれ、復讐を果たす存在そのものとなっている。Maievのその執念が、Illidanに更に多くの破壊を引き起こす自体を呼ばないことを祈るだけだ」
Tyrande「私たちも故国へと戻りましょう。私たちはやっと安寧を得ました」



††† ††† ††† †††



■Chapter.1: Misconceptions

 Grand Marshal Garithosは、Dalaranの生き残りたちを率いていた。彼らはAllianceの要塞の最後のひとつで再起を図っていた。彼らはKael'thasの到着を待っていたが、彼は遅れているようだった。

Garithos「随分と遅いご到着ですな、Kael'thas王子。貴方がたElfは時間を守ることについては一家言あるものとばかり思っておりましたが」
Kael'thas「Garithos卿、そうはならなかったのです。私たちは、海を越えた大陸から来たNight Elfの一団と出逢いまして──」
Garithos「私はそんな絵空事の弁解に興味はないぞ! 貴方がたElfはAllianceに仕えるためにここに居て、そして貴方がたは私の命令に従うのだ! それは分かっているのかね?」
Kael'thas「勿論、勿論ですとも、Garithos卿」
Garithos「現在の状況としては、UndeadどもがDalaran奪回のために動き始めている。奴らの主力はSilverpineを南に向って進軍している。我々はそれを山岳の拠点で迎え撃つ」
Kael'thas「私の配下の者たちはいつでも出立できます! それで、何時出陣するのですか?」Garithos「我らの軍はすぐにでも出発するが──貴方がたはここに残るのだ。偵察の報告によると、東からUndeadの第二軍が向ってくるかも知れないとのことでな。そこで、そちらの方面を警戒できるよう、貴方がたには離れた場所にある監視拠点の幾つかの修復を頼みたい」
Kael'thas「ですが、私たちは戦士であって、そんな──」
Garithos「貴方に命令したのだぞ、Kael'thas王子。Elfの耳ならば充分に今の命令を聞き届けることができたろう。早く行け!」

 Garithosと配下のKnightたちは前線へと出陣した。

Kael'thas「いけだかな莫……さっさと終わらせてしまおう!」

 Kael'thasとその配下は最初の監視拠点を修理し、更に二番目、三番目の監視拠点の修理のためには船が必要であったため、岸へと向った。少数のUndeadの軍に襲われたが、Kael'thasたちはそれを撃退した。しかし、造船所は破壊されていた。

Kael'thas「なんてことだ。湖の向こう側に行かねばならないのに」

 Lady VashjとNagaが泳いでいた。それらは、幾つかの船を引いてきた。

Kael'thas「Nagaだ! 奴らはDemon Illidanの配下だ!」
Lady Vashj「妾たちは己の意思のままに振舞っておる、王子殿。妾はLady Vashj。妾と同胞は、汝らとの争いを求めてはおらぬ。ただ、汝らの一助となりたいだけじゃ」
Kael'thas「魔女め、貴様らに求めるものなど何も無い」
Lady Vashj「左様かえ? 湖の対岸に行くために、船が必要ではないと、そう云うのかえ?」
Kael'thas「それは、だが、何故無償でこれらを私たちに? ご婦人よ、どうしてあたなたちを信頼するべきだと云うのですか?」
Lady Vashj「妾たちと汝ら、ふたつの種族は共に同じ種族を先祖としておる。今宵この時、Undeadに対する危機をも同じくしておる。この船は、妾たちの好意のあらわれじゃ」
Kael'thas「そうなのですか。では、あなたがたのご好意に甘えましょう。ありがとうございます」

 これらの船を利用し、Kaelは対岸のふたつの監視拠点の修理を行った。丁度最後のひとつの修理を完了すると、Garithos卿が訪れて来た。

Kael'thas「これは、Garithos卿。ご命令どおり、監視拠点の修理を完了いたしました。私たちは──」
Garithos「私は前線で良くない知らせを受け取ったのだ。貴方がNagaと協力関係にあるというのは本当かね?」
Kael'thas「ええ、まあ。彼らには湖を渡る時に手助けしていただきました。彼らが私たちにとっての脅威ではないと、私が保証──」
Garithos「奴らは人とは異なる存在だ、他の敵と同じように撃ち殺すべき存在だぞ! Blood Elfども、忠誠心のより所をどこに置くのかゆめゆめ忘れるなよ。私は再び前線に戻る。貴様たちはここに残り、以降の命令を待て」


■Chapter.2: A Dark Covenant

 翌日、Kaelたちの所にGarithosから大使が到着した。

Emissary「ごきげんはいかがかな、Kael王子。私はGrand Marshal Garithosからのご命令を承っております」
Kael'thas「どのような指令でしょうか?」
Emissary「あなたがたに修繕いただいた監視所からの報告によると、大規模なUndeadの軍が発見されました。Garithos卿のご命令は、UndeadがDalaranに至る前にそれらを殲滅せよとのことです」
Kael'thas「さほど難しいことではありませんね」
Emissary「残念ながら、あなたの配下の手勢は少数になるかも知れません。Garithos卿の命令はもうひとつあり、歩兵、装甲兵、支援部隊は前線に行くように命令されました。全体、すぐに移動せよ!」
Kael'thas「莫迦げているぞ! 不当な扱いと無茶な命令とUndeadとが私を襲っているのか?」Emissary「Grand Marshalは、あなたを非常に信頼なされております。その能力と、その構想力を」

 大使はKaelの軍隊を伴って帰還した。

Kael'thas「Garithosめ……奴は憎むに値するぞ」

 少数の手勢では対抗できず、拠点はあっという間に占拠されてKaelは湖の中央で守りを余儀なくされる。

Spell Breaker「Kael殿下、奴らに拠点を占拠されました。私たちは完全に包囲されています!」
Kael'thas「拠点を失ったか。臨機応変に対応せざるを得ないか」

 VashjらNagaたちが再び来た。

Lady Vashj「Ishnu-dal-dieb、Kael殿下。妾たちは、下劣なる死者どもらと戦う汝らに加勢しようぞ」
Kael'thas「ようこそ、Lady Vashj。私としてはその支援を歓迎したい所だが、私の指揮官はあなたがたの種族を快く思っていないのです」
Lady Vashj「はて、その指揮官とやらはいずこににおるや? 汝らと危うきを共にしておらぬのかえ? 汝らの手勢は少数。妾たちがおれば、数的優位が得られよう。さもなくば、汝らはここにて滅ぶこととなろう」
Kael'thas「それは、確かに……だが……。……私は、私はあなたの申し出を受けます、Vashj殿」
Lady Vashj「それは重畳。さて、行くとしよう」

 Lady Vashjの加勢を受け、Kaelとその配下はUndeadを撃退した。

Kael'thas「ご婦人よ、心より感謝致します。あなた方のご協力を得たことが、私の身の破滅になるのではないかと不安を抱いております。ですが、そうしなければこの勝利は無かったでしょう」
Lady Vashj「おおそよ、汝が仕えておる者は、己と同じ種族の者しか信頼せぬのであろ。そのような寛容の無き者に忠誠を感じるものかえ」
Kael'thas「私を彼とAllianceに縛るものは、忠誠と任務です。ですが現状は、私たちの破壊された故国のように遥か遠くになってしまったようにも思えませす。ただ確かなことは、私とその仲間の者たちは、なにかを渇望しているということです」
Lady Vashj「Kaelよ、新たな道を、栄光と力を見出すしたいということであろうかな」
Kael'thas「この渇望を正しく表現することはできません。ですが、故国を破壊されてより以降、私とその仲間たちは自らの精神を引きずり出されるような感覚を受け続けているのです。それこそが、私たちの心を蝕む飢えなのです」
Lady Vashj「Kaelよ、妾たちはその飢餓感を知っておるぞ! 妾たちと同様に、汝らも魔法中毒になっておる! 一千年に渡って汝らの中を満たしていたそれは、汝らの土地とSunwellの喪失で枯れ果てたのじゃろう」
Kael'thas「私たちは、長きに渡って受け継がれた力の源から切り離されたのか! 魔法の新たな源無くしては、私の民は確実に死を迎えることとなるでしょう」
Lady Vashj「Kaelよ、この世界には、他に力の源泉となるべきものもあるのじゃ。例えば、そう、Demonなぞも」
Kael'thas「なにを莫迦なことを云っているのですか。私たちは、そこまで自棄にやっていません」
Lady Vashj「汝らのその嫌悪、妾にも理解できるがの。じゃが──」
Spell Breaker「Kael殿下! Grand Marshal Garithos殿がお戻りになられました。全軍を率いておられます」
Kael'thas「なんだって? Vashj、早くここから逃げて下さい。あなたがたの安全を保障できません」

 Nagaは水に向って逃げた。Garithosの兵は逃げるNagaを発見した。

Knight「Nagaです!」
Garithos「捨て置け! Kaelよ、語るに落ちたな。私は貴様がNagaと手を組んだことを知っていたのだ。裏切りの証明はなされた。後は貴様ら裏切り者を処刑するだけだ」
Kael'thas「お待ちください、部下たちは関係ありません! 全て私の決定に従っただけで──」
Garithos「無駄口を叩くな。私は傲慢なElfどもを信用せぬ。そもそもAllianceが貴様らの種族を受け入れたこと自体が間違いだったのだ。その間違いが今やっと正されるのだ。連行しろ!」

 Garithosとその配下はKaelたちを捕らえ、Dalaranへと向かった。Vashjは高台からそれを見ていた。


■Chapter.3: The Dungeons of Dalaran

 Kaelとその配下はDalaranの魔法の牢獄へと捕らえられた。処刑が行われる日を待ちながら、二日間そこに拘留されていた。

Kael'thas「このような事態を仲間に知らせるにはどうすればいいんだ? この牢獄に閉じ込められたままでは、魔法への渇望が私たちの身を破滅させてしまいそうだ」

Guard Marcus「すぐに方がつくさ、裏切り者どもめ。Garithos卿は夜明けに貴様らを処刑することを考えておられるからな」
Guard Trogdar「日の出まではまだ充分な時間がある。Elfどもがなにかしやしないか、嫌な予感がするぜ」
Guard Marcus「この牢獄は、Kirin Torが己の下僕が逃げられないようにするために建てられたものだ。Elfの魔法であろうとも、この魔法の牢獄の前には無意味なのだ」

 Lady Vashjが牢獄の緑色をした水から這い上がり、二人のGuardを雷光で撃ち殺した。そして、Kaelの牢獄の扉を破壊した。

Lady Vashj「大過はないかえ、Kael殿。間に合わぬかと思っておったぞ」
Kael'thas「そんなことはありませんよ、Vashj殿。素晴らしいタイミングでした。ですが、私たちの仲間を解放したとしても、逃げるべき場所もありません。Garithosの軍は私たちの10倍はあります」
Lady Vashj「汝は今重大な岐路に立っておる。ここに残り、Humanどものその手にかかって殺されるか……それとも更に暗く昏い、されど自由なるその道を選ぶかの」
Kael'thas「昏き道ですと?」
Lady Vashj「妾たちの今居る都市の上に、他の世界へと通ずるPortalが存在しておるのじゃ」
Kael'thas「それは、知っております。Lich Kel'ThuzadがArchimondeを召還するために開いたものだと」
Lady Vashj「左様。妾の主、Illidan様はPortalを越えたその向こうで妾たちを待っておられるのじゃ! 汝の民を主のものとへ導き、汝が新たな運命を創り出すのじゃ。さすれば、主たる御方が汝の民の燃え盛る飢えを満たしてくれようぞ」
Kael'thas「狂暴なDemonと手を組むのか……或いは、私の民を死に導くか……か。最早選択の余地はないな。よし、先ずは私の副官たちを解放しなくてはなりません。逃げ出すためにも、彼らとその配下の助力が必要です」
Lady Vashj「宜しかろう」

 VashjとKaelが地下牢を巡った。そこには、Kirin Torの下僕たる獣やGarithosの配下がいた。

Guard Seth「忌々しいElfどもが逃げてやがる! 同数では勝ち目がないぜ!」
Guard Troy「俺たちが自分の手を下すまでもない。この獣どもに奴らを攻撃させればいいんだからな!」

 これらの獣の多くは非常に強力であったが、Kaelの配下は次第に集まりながらそれらを撃退した。最終的に、Kaelは牢獄から逃げて二つの門へと至った。第一の門が開き、看守が現れた。

Jailor Kassan「Kael殿下、あなたは行こうと思う所へ行くことができましょう。それも、あなたならばこそ容易くできるのでしょう」
Kael'thas「Kassan、君はKirin Torに仕えていたはずだ。だが、最早その組織は存在しない。私と配下の者たちは、この牢獄から立ち去るつもりだ」
Jailor Kassan「良き魔術師が悪へと転じるのを見るのは心が痛む。だがな、若者よ、君がしなくてはならないと思うことをするがいい」

 Kaelは看守とその配下を打ち破った。

Kael'thas「私の民が集まりました。後はPortalへと向かうだけ──」
Lady Vashj「待つのじゃ、Kael殿。全ての者たちを通すだけの時間Portalを開けてかねばならぬ。されど、妾たちが立ち去るより早くGarithosの軍が攻撃を始めるに違いあるまいな」
Kael'thas「ならば私はGarithosの軍を押し止めましょう。あなたが困った時はいつでも私を頼って下さい」

 Kaelと配下の者たちは牢獄を脱出すると、Dalaranの通りを越えて走った。PortalはGarithosの軍の方がより近く、対立は避けられそうも無かった。

Kael'thas「急ぐのだ! 配置に付け!」
Lady Vashj「妾たちはPortalへと辿り着いたぞえ。さて、Portalを開くとしようぞ!」
Engineer「Kael殿下、私と他のEngineerとは、Dalaranの防衛網の構築に携わっておりました。私たちはここの廃墟から資材を回収し、必要とされる防御用の塔を建設することができるでしょう」
Kael'thas「それは助かる。最大限働いて貰う事としよう」

 一方、GarithosはKaelが何をしようとしているのかを察した。

Garithos「忌々しいElfどもめ。奴らがどう動くかは想像できていたが……。邪魔な塔のことなど忘れろ! Portalを破壊するのだ! そうすれば、裏切り者どもは何処へも行けぬ。Portalを爆破しろ! Portalを破壊した者は誰であれ英雄だぞ!」

 VashjはPortalを開いた。

Lady Vashj「完了じゃ。Portalは開かれた。脱出を始めるのじゃ!」
Kael'thas「流石です、Vashj殿。戦略のための塔を更に建設するのなら、他の者たちが辿るつけるのに充分な時間Garithosの軍を遅らせられるようにすべきですね」
Kael'thas「その通りじゃの。Portalが陥落させられたとするならば、妾たちは誰も生き残れぬじゃろうからの!」

 Garithosは軍をPortalへ向けて進軍させた。Kaelの軍と建設された塔とが、それを押し止める。程なくして、Kaelの軍もPortalへと進入を開始した。

Lady Vashj「Kael殿、全ての者がPortalを越えたぞえ! 下がるのじゃ! さすれば妾たちの背後でPortalを閉じてくれようぞ!」
Kael'thas「承知した! 皆の者、後退しろ! Portalへと下がれ!」
Lady Vashj「若き王子よ、妾たちは今運命に対する最後の一歩を踏み出したのじゃ」

 VashjとKaelはPortalを越え、そしてそれを閉じた。


Interlude: The Dusts of Outland
 VashjとKaelはPortalを越えた。たどり着いた場所は岩に覆われた不毛の場所だった。

Kael'thas「この荒れ果てた場所は一体何処なのですか?」
Lady Vashj「この粉々になった世界はOutlandと呼ばれておる。OrcのHordeの故国であったDraenorの残骸よな」
Kael'thas「信じられない。ここがKhadgarがかつてAllianceの遠征軍を率いた場所か。彼はOrcを滅ぼすことに成功し、逃亡しようとしたNer'zhulが大規模な次元の門を幾つも開けた……だが、それによって引き起こされたのは星を引き裂く事態だった」
Lady Vashj「左様。そして今宵この時、この昏く死せる世界の葬列の中に、妾たちは仕えるべき主を探すために来たのじゃ」
Kael'thas「Illidanか……しかし何故このような場所に来たのですか?」
Lady Vashj「さて、何故であろうかな。いずれにせよ、妾たちはあの方をはよう探さねばならぬ」
Kael'thas「そうですね。私は彼に逢いたい。もしも彼が私の民の魔法に対するこの飢餓感を癒してくれるのなら、私は喜んで彼に忠誠を誓います」


■Chapter.4: The Search for Illidan

 Illidanを探すこと三日、KaelとVashjはどうすべきかを考えていた。彼らは拠点を設立し、そこを中心として様々な場所を探した。

Kael'thas「しかし、なんと酷い場所だ。三日の間旅しても、生命の兆しすら見えない。私たち以外になにも存在しないのではないかと疑いたくなるな」
Lady Vashj「どうやら、そういうわけではないようじゃの。風が向きを変え、においを運んで来たようじゃ」

 彼らは更に旅し、Night Elfの居留地を発見した。

Lady Vashj「Night Elfじゃと? 何故このような場所にあの輩どもが?」
Kael'thas「Warden Maievは如何なる犠牲を払ってもIllidanを捕らえると誓っていました。彼女がIllidanを捕らえるために戦士たちを率いてここに訪れたのでしょう!」

 VashjとKaelは奇妙な籠をそこに発見した。

Kael'thas「あれを! Illidanがあの籠に捕らわれ鎖で拘束されています! Night ElfたちはIllidanを自分たちの拠点へ連れ帰るつもりなのでしょう」
Lady Vashj「なれば、Night Elfどもが安全な場所に逃れる前に、Illidan様を救わねばならぬ!」

 VashjとKaelとはIllidanを救い出したが、意識が無いことに気づいた。意識の無いIllidanを二人は安全な場所である自分たちの拠点へと運んだ。

Illidan「Vashj、助かったぞ。Maievの牢獄で更に一万年の時を過ごすなど、考えたくも無かった」
Lady Vashj「Illidan様、妾たちは貴方様を見捨てたりはしませぬ。ですが、この解放は、あの者たちの助力あればこそ」
Illidan「彼らは何者だ? 若いElfは見覚えがあるが、だが……」
Lady Vashj「あの者らは自らをBlood Elfと呼んでおりまする。あの者たちは、かつて貴方様に仕えたHighbornの最後の末裔、そしてその王統Kael'thas殿にございます。彼とその配下の者たちは、貴方様の賢明さに浴し、貴方様の意思に忠誠を誓うためにここに来たのでございまする」


Interlude: Illidan's Task
 数時間後、Illidanは回復して拠点に居た。

Illidan「Kael、お前の選択は正しい。オレはお前たちと同じく魔法中毒の苦痛と飢餓感を持っている」
Kael'thas「Illidan殿、私たちを助けていただけるのか? 私たちを癒すことができるのですか?」
Illidan「癒す方法は無い。だが、飢えを満たす方法ならばある。オレについて来い。お前たちが想像もしない程の魔力を与えよう」
Kael'thas「わかりました。Illidan殿、私とその仲間のBlood Elfは、あなたに仕え忠誠を誓いましょう」
Illidan立て、Kael。お前はオレの片腕となり、そしてオレの怒りの先触れとなってもらう」
Kael'thas「それで、これからどうするのですか?」
Illidan「Hyjal山の戦いでBurning Legionが敗れてから数ヶ月後、オレはDemonlord Kil'jaedenと出逢った……」

 Illidanの回想が始まる。
 Kil'jaedenと出逢った時、Illidanは森林に居た。Kil'jaedenはIllidanよりも背が高く、森林の一番高い木と同じ程に大きかった。

Kil'jaeden「Illidanよ、Burning Legionの友であり敵であった者よ。だが、Gul'danの頭蓋骨を破壊したことで貴様は我らのこの世界での敗北を確実の者とした。我は貴様に我らに仕える二回目の機会を与えてやろうと思う」
Illidan「何をさせようと云うんだ?」
Kil'jaeden「我が創造物であるLich Kingは我を裏切りおった。奴は我が意思に従うという協定を破ったのだ。その精神は未だIcecrownの"凍てつきし玉座"(Frozen Throne)に捕らわれている。それを破壊しろ。さすれば、貴様の望むがままに望むものをくれてやろう」
Illidan「わかった、偉大なる者よ。やってやろう」

 回想は終わり、現在に戻った。

Illidan「Dalaranにおいて、オレはIcecrown氷河を取り巻く極地の万年雪すらも遠隔地から溶かす"Sargerasの眼"を使おうとした。その儀式が完成していれば、Lich Kingは永遠に滅ぼされただろうが」
Lady Vashj「されど、忌まわしきNight Elfどもらめが介入してきおった」
Illidan「お陰で儀式は失敗に終わった。失敗した以上、Kil'jaedenの怒りをかわすため、この地に逃れて来た。この地に残るためには、Kil'jaedenの配下全てをこの地から一掃する必要があるだろう」


■Chapter.5: Gates of the Abyss

 二日後、Outlandの不毛の荒野で、IllidanとKaelはDemon Gateを攻撃する準備をしていた。

Illidan「ずっと以前、Draenorが破壊された後にMagtheridonという名のPit Lordが生き残ったOrcを集めてOutlandを支配した。その時以降、奴の勢力が強くなっていった」
Kael'thas「どのようにしてでしょう? この世界が砕かれた時にOrcの大部分が殺されたのなら、どうやってMagtheridonは勢力を増したでしょう?」
Illidan「惑星を引き裂いたPortal、それなのだ。Ner'zhulのPortalの多くがまだ稼動状態にある。Magtheridonは日々それを通して数十体の不運なDemonを召還している」
Kael'thas「つまり、私たちはそれに永遠に封をしなくてはならないというわけですか」
Illidan「その通り。召還の門を探し出したら、オレがそこを閉じる。全てを封じたら、Magtheridonの"黒の城砦"(Black Citadel)に進軍し、Outlandをオレたちの支配下に置くこととしよう」

 全部で四つの門があり、それを封じるのにIllidanはひとつにつき三分を必要とする。封じている間にもDemonが溢れ、VashjとKaelはIllidanを守らなくてはならない。最後の門を閉じると、次にMagtheridonへと向かう。

Kael'thas「完了です! 次元の門は全て封じられました! Magtheridonが軍を増強する手段は最早存在しません」
Illidan「そうだな、だが奴の残った軍はまだかなりの数だ。奴の"黒の城砦"を襲撃するのは容易くなかろうな」
Kael'thas「ですが、他に手段はありません」


■Chapter.6: Lord of Outland

 同日、Illidanは準備を整えると目標である"黒の城砦"(Black Citadel)へと軍を定めた。Magtheridonは数体のDemonやOrcと共にホールに居た。

Fel Orc Warlock「Magtheridon様、私たちの敵は間近に迫っております」
Magtheridon「新参者は邪魔な蝿のようなものだな。この我の力を覆すことなどできはせぬ。我はOutlandの支配者! 我が意思に従わぬ者あれば、その愚行を後悔することとなろう!」

 IllidanとKaelは城砦の門へとたどり着いた。そこは城砦兵器によって守られており、Kaelの軍を容易く後退させた。

Illidan「Magtheridonは数年をかけて勢力を増した。だが、奴は本当の強敵と出逢わなかった。故に、奴は退廃的に自己に浸ってしまった。うるさいだけの駄犬なぞ、我らの奸智や意思に対することなどできはしない」
Kael'thas「輝かしい戦いとなることでしょう。Magtheridonの軍は私たちに数で勝っていますが、こちらの配下の者たちは、死を賭して戦うことを厭いません」
Illidan「Kael、お前とお前の配下の者たちのその決意を嬉しく思う。その勇気だけで充分だ」
Lady Vashj「Illidan殿、新たな来訪者が訪れております」

 Draeneiの一団が到着した。彼らはDraenorに住んでいた種族であり、彼らは堕落したOrcやDemonと戦っていた。彼らは隠行に優れており、攻撃しない時は常に不可視状態になることができた。彼らの助力は、城砦攻略においてIllidanに戦略上の利点を与えてくれた。

Akama「私たちDraeneiは、何世代もの間Orcとその主たるDemonと戦っていました。私たちは遂に、この永遠の呪いを終わらせるのです。Illidan様、私たちにご命令を」

 AkamaはKaelの軍を後退させていた城砦兵器にエネルギーを供給していたジェネレータを破壊した。

Illidan「約束しよう。Akama、お前たちの復讐を許すと。この夜が終わるまで、オレたち全てがそれに酔うことだろう。Vashj、Kael、最後の命令だ。攻撃しろ! 復讐の時は今来たり!」

 三種族の協力で、IllidanはMagtheridonの玉座へとたどり着いた。Magtheridonは他の者たちと共にいたが、Illidanたちは素早く彼を打ち破った。

Magtheridon「貴様など知らぬ。だが、その力は強大だ。貴様はLegionの手先か? 我を試すために送られたのか?」
Illidan「オレはお前の地位を奪い取るために来たのだ。お前は最早過去の遺物に過ぎん、Magtheridon。過去の時代の亡霊め。未来こそがオレのものだ。これからは、Outlandとそこに住まう者全てがオレに従うことになろう。聞くがいい、恐れおののく定命の者たちよ! オレこそがお前たちの支配者にして主なのだ!」


■Final: Kil'jaeden's Command

 ほんの数瞬後、赤い雲から暴風が吹き荒れる。それは"黒の城砦"(Black Citadel)へとまっすぐに向かった。そこには勝ち誇ったIllidanが居た。

Kael'thas「Vashj、あれは一体? この嵐は何処から来たんだ?」
Lady Vashj「頭を低くしておれ! 何か恐ろしいものが近くにおるわ!」

 雲はKil'jaedenへと変貌した。その姿はIllidanよりも巨大であった。Kil'jaedenが言葉を話すたびに惑星が震えるかのようであった。

Kil'jaeden「愚かな雑種めが。貴様は我が命じた"凍てつきし玉座"の破壊の任を失敗した。そして、この放棄された地で我の眼から逃れようとはな! Illidan、随分とずる賢いことだな」
Illidan「Kil'jaeden! オレは単に、目的の達成が遅れているだけだ。オレは軍の増強をしようとしていたのだ。Lich Kingは必ずや破壊すると誓おう!」
Kil'jaeden「本当かな? ふむ、貴様が集めたこれらの生き残りどもには見込みがありそうだ。Illidan、最後の機会を与えてやろう。"凍てつきし玉座"を破壊するか、それとも我の永遠の怒りに触れるか、そのどちらかだ!」

 光芒とともにKil'jaedenはOutlandから去った。

Illidan「この地に隠れることは賢明な判断とは云えなかったか。やらねばならぬことは、未だオレたちの前に存在する。お前たちは、死の如き冷たき世界の中心へと、オレに従ってついて来てくれるか?」
Lady Vashj「Naga種族はあなた様のご命令に従うのみじゃ、Illidan殿。あなた様が赴かれる所へ妾たちの向かおうぞ」
Kael'thas「Blood Elfも同様に。私たちはScourgeを追い払い、そして命ぜられるままに"凍てつきし玉座"を粉々にしましょう」



††† ††† ††† †††



■Chapter.1: King Arthas

 首都LordaeronでArchimondeの命令下にあったDreadlordたちはScourgeについての方針を論じていた。

Detheroc「我らが最後にArchimonde卿より命令を受けてから既に数ヶ月が経つ。Undeadどもの腐る様を見守るのはもう飽き飽きだ! 我らはここで一体何をしているというのだ?」
Balnazzar「私たちはこの地を監督せよと命じられているのですよ、Detheroc。ここに残り、Scourgeの準備を怠り無くするのが私たちの義務なのです」
Varimathras「確かにな。だが、ここまで命令が無いのはおかしなことだ」

 Kel'ThuzadとDark Archer Sylvanas Windrunnerとがその光景を近くから見守っていた。

Sylvanas「Legionはもう数ヶ月も前に打ち破られたわ。どうして彼らはそれを知らないの?」
Kel'Thuzad「云えるわけがなかろう。奴らはここ数ヶ月ずっと自ら命令を下しているし、Scourgeの大半は地下にいるからな」

 城の門が砕かれた。

Sylvanas「一体何が? 誰がこのような……」

 Arthasが現れ、三体のDreadlordへと近づく。

Arthas「ご機嫌は如何かな、Dreadlordどもめ。俺が不在の間、俺の国の世話をしてくれたことには感謝をするべきかな。だが、最早俺は貴様らを必要としていない」
Varimathras「Arthas卿!」
Balnazzar「この地は私たちのものなのですよ。ScourgeはLegionの一部に過ぎません!」
Arthas「黙れ、Demonどもめ。貴様らの主は敗れた。Legionの目的は果たされなかった。貴様らの死によって、この最後の一幕が閉じることとなろう」
Detheroc「終わらぬわ、Humanめ」

 Dreadlordたちは去った。Arthasの友人が彼のもとへと寄った。

Kel'Thuzad「必ずや戻って来てくださると思っておりました、Arthas殿下」
Arthas「俺は戻ってきた。だが、今や俺を呼ぶなら殿下ではなく王と呼べ。ここは俺の支配地なのだからな。Humanの最後の残りを始末することで、俺たちの王国を安全にしなくてはならん」
Kel'Thuzad「ですが、王よ、Humanどもは村を捨て始めました。彼らは警告を越えようとしております! 彼らが山の中へと逃亡したなら、それら全てを捕らえることは不可能でしょう」
Arthas「ならば、そ奴らが逃げる前に虐殺しろ! その死はNer'zhulへの仮の供物なのだ!」

 Arthasは虐殺を行い、最も遠い村のひとつが存在する森へとたどり着いた。すると、突如としてArthasを苦痛が襲った。

Arthas「うぐあぁぁぁぁぁッ……なんだ、この耐えられぬ程の痛みは。なにが俺に起こったんだ?」

 ArthasはIcecrownの内側に捕らえられたLich Kingの幻視を受けた。

The Lich King「我に危険が迫っている! 力が消えて行く! 時間が無い!」

 幻視が消えた。

Kel'Thuzad「Arthas王、どうしました?」
Arthas「大丈夫だ。苦痛は去った。だが、俺の力が衰えている。なにか、良くないことが起こったのだ」
Kel'Thuzad「軍を呼び戻しましょうか?」
Arthas「いや、今は狩りを果たそう。それが終わったら、この謎を解くとしよう」

 Arthasは村と全ての村人を沈黙させた。

Arthas「遂にAllianceは滅びた! 最後の落伍者どももいなくなった。俺たちは──」

 再び苦痛がArthasを襲った。

Arthas「ぐッああああぁぁぁぁぁぁ……またか!」


The Lich King「我は、我はLich King! "凍てつきし玉座"(Frozen Throne)に危険が迫っている! すぐにNorthrendへと戻れ! 我が意思に従え!」


Kel'Thuzad「王よ、どうしたのですか?」
Arthas「首都に戻るぞ。長い旅に出ねばならぬ」


■Interlude: A Kingdom Divided

 深夜、SylvanasはScourgeを支配していた三体のDreadlordと会見していた。

Balnazzar「Sylvanas殿、来てくださったか」
Sylvanas「どうして私は私として在るのかしら? どのような理由かはわからないけれど、私の頭の中にはもうLich Kingの声が聞こえないわ。私の意志は再び私のものとなった。Dreadlordよ、あなた方はその理由を知っているようね」
Varimathras「俺たちはLich Kingがその力を失いつつあるのを知ったのだ! そのため、君のようなUndeadに命令を下す彼の能力も衰えた」
Sylvanas「Arthas王はどうなの? 彼の力は?」
Balnazzar「彼のRuneblade Frostmourneは未だ強力な魔法を宿していますが、Arthas卿の力は避けがたく衰えて行くことでしょう」
Sylvanas「あなた方は彼の支配を覆そうとしているのね。そして、私にその手助けを望んでいる」
Detheroc「Legionは敗れたかも知れぬが、我らはNethrezimなのだ! 我らは新参者に良い目を見させようとは思わぬ! Arthasの隆盛はそろそろ没落せねばならぬ!」
Balnazzar「Lich Kel'Thuzadは主たる存在を裏切ろうとは思わぬ程の忠実者です。一方、あなたは……」
Sylvanas「彼を憎んでいる。私は復讐を求める理由があるわ。Arthasは私の同胞を殺し、私をこのように変貌させた。あなた方の流血のクーデターに参加するのも悪くはないわ。でも、私は私のやり方でやらせてもらう」

 Sylvanasは去った。

Balnazzar「正直、私には彼女は信頼できません。彼女の心はまだElfのままです。私たちに協力するなど在り得ないことでしょう」
Varimathras「慌てるな。あの女は強力な精神を持っている。だが、Arthasに対するその憎悪は、俺たちの目的を果たす手助けとなろう」
Detheroc「そうだな。さて、先ずはそれぞれ落ち着き先を決め、その後祝祭を始めるとしよう」


■Chapter.2: The flight from Lordaeron

 ArthasとKel'ThuzadはLich Kingの命令に従ってNorthrendへと行くために、港に船を用意していた。

Kel'Thuzad「発作は酷くなっているのですか?」
Arthas「ああ。俺の力は殆ど失われ、下僕の戦士に我が意思を命じることもできない。Lich Kingは俺がNorthrendにたどり着けなかったら、全てが失われると警告された」
Kel'Thuzad「恐れる必要はありません、王よ。出発の準備は整い、船は海岸にて待っております」

 Arthasが城門を抜けると、門が背後で閉じた。Arthasの前に三体のDreadlordと幾体かのUndeadが現れた。Arthasは捕らわれた。

Detheroc「計画の変更だ、Arthas王様。貴様は何処にも行けぬ」
Kel'Thuzad「暗殺者め! 罠か!」

 幾体かのGhoulがArthasに襲い掛かる。Arthasは戦うが、一体を相手にするのがやっとの様子だった。

Balnazzar「Humanよ、あなたは戻ってくるべきではありませんでした。あなたの力は弱まり、私たちはあなたの配下の殆どの支配権を得たのです。短命の王、短命の統治でしたね」
Kel'Thuzad「数が多すぎます、王よ! 逃げるのです、この都市から逃げて下さい! ここは私が。Wildernessにて再会しましょう」
Arthas「わかった。幸運を祈るぞ」

 Arthasは街を抜け、弱まってなお戦って逃げ道を確保した。Undeadの少数はArthasに忠実だったが、大多数はArthasに敵対していた。なんとかArthasは街から逃れたが、四体のAbominationが待ち受けていた。配下には、二人のNecromancerが居るだけだった。

Arthas「こいつらの相手をしている暇などない! 早くなんとかしなくては!」

 二体のBansheeが現れ、Abominationに憑依した。Abominationはそれぞれ殴りあい、倒された。

Arthas「助かった、感謝を。だが、お前たちの主は何処だ? Sylvanasは何処へ行った?」
Banshee「彼女は偉大なる王たる貴方を見つけるために私たちを使わせました。私たちは川の向こうへとあなたを導くために来たのです。川を渡れば、Wildernessへと逃れられるでしょう」


■Interlude: Sylvanas' Farewell

 暫くして、ArthasとBansheeとは森を抜けて休める場所へとたどり着いた。

Banshee「ここです、姉妹たち。私たちはここで偉大な国王にお休みいただくのです」
Arthas「何故こんな所で? 俺たちはKel'Thuzadを見つけなくてはならんのだぞ──ぐうううあああああッ!」

 Arthasを苦痛が苛む。Lich Kingの声が聞こえた。

The Lich King「欺かれたのだ! すぐに来るのだ! 我が意思に従え!」

 Arthasが何が起こっているか悟っている間に、BansheeはArthasの配下全てを殺した。

Arthas「どういうことだ?」

 Arthasは矢で射抜かれた。

Arthas「Sylvanas!」
Sylvanas「ようこそ、Arthas。借りを返す時が来たわ」
Arthas「反逆者め! 俺になにをした?」
Sylvanas「それはあなたのために作った特性の毒矢よ。あなたの体の麻痺はそのせい。後は私の怒りを感じながら苦しむがいい」
Arthas「さっさと殺せ」
Sylvanas「早く殺せ……ね、それは、あなたが私に与えたように? まさか。私の矢であなたは走ることもできない。私が思うままに苦しむがいいわ」

 Kel'Thuzadとその配下が現れた。

Kel'Thuzad「下がれ、意思無き者どもよ! 王よ、死ぬべき時ではございません」

 Kel'Thuzadとその配下はBansheeを打ち破った。Silvanasは後退した。

Sylvanas「Arthas、これで終わりではないわ! あなたを狙うのは、これで終わりではない!」

 ArthasとKel'Thuzadは港へとたどり着いた。

Kel'Thuzad「Sylvanasの毒矢の効果は次第に消えるでしょう。Northrendへ旅立つ準備は全て整いました」
Arthas「君は忠実なる友だった、Kel'Thuzadよ。俺の未来になにが待っているのか、国に戻れるのかすらわからない。だが、俺は君にこの国を見守って欲しい。俺の遺したものが続いていくことを確かめて欲しい」
Kel'Thuzad「わかりました、Arthas王、そうしましょう」


■Chapter.3: The Dark Lady

 二日後、Sylvanasは自由の身となっていた。

Banshee「主殿、あなたは不安を感じているのですか?」
Sylvanas「姉妹たち、あなた方は違うというの? かつて私たちはLich Kingの奴隷だった。私たちに意識はあった。けれども、行った行為は奴らの名の元に行われたに過ぎない。そして今、私たちは……自らの意思に在る」
Banshee「良くわかりません。私はあなたが歓喜の中にあると思っていたのですが」
Sylvanas「喜びですって? この呪われた状態でなにを喜ぶというの? 私たちは未だUndead、未だ化け物のままなのよ。この苦痛の中、奴隷ですら無いのなら、私たちは一体どういう存在だというの?」

 Sylvanasの居留地にPortalが開かれ、Varimathrasが現れた。

Varimathras「ご機嫌はいかがかな、Sylvanas殿。俺と兄弟とはArthasの支配権を覆すために演じたお前の役割を正しく評価している。故に、俺は俺たちの新たな軍への招待を申し出に来たのだ」
Sylvanas「Varimathras。私の興味はArthasの死にしかないわ。政治や権力のやりとりには興味が無いの」
Varimathras「口を慎むんだな、ご婦人殿。俺たちの怒りを買うのは件名ではないぞ。俺たちがPlaguelandsの未来なのだからな。貴様らは俺たちと共に手を取り、支配するか、捨てられるかだ」
Sylvanas「私は充分長い間奴隷として過ごして来たわ。自分に手枷をはめ、自由を放棄しようとは最早思わない!」
Varimathras「よかろう。俺たちの答えは間もなく知ることになるだろう」

 Varimathrasは来た時に使用したPortalを使って姿を消した。SylvanasはVarimathrasの言葉が攻撃を行うという意味であることを正確に悟っていた。それよりも早く、SylvanasはDreadlordの拠点を攻撃した。結局、VarimathrasはBansheeによって捕らえられた。

Sylvanas「遺す言葉は?」
Varimathras「Sylvanas、殺さないでくれ。頼む! 俺はあなたに仕えよう……誓って仕えよう!」
Sylvanas「ならば、お前の仲間を裏切りなさい。私は聞いているのよ」
Varimathras「俺は兄弟たちがなにを計画しているか知っている。奴らの軍が何処を拠点にしているかもだ。あなたに仕え、そして奴らを倒す手助けをしよう!」
Sylvanas「いいでしょう、Varimathras。私はあなたの忠誠心を試させて貰うことにするわ。いいこと、私はあなたの手綱を常に引き締めていることを忘れないで」


■Chapter.4: The Return to Northrend

 三週間の航海を経て、Arthasの艦隊はNorthrendのIce Shoresへと接岸した。

Arthas「Northrendか。ここで最後を迎えて以来の時全てを感じるようだ。何者かがあそこでLich Kingを脅かしている。早くIcecrownにたどり着かねば」
Necromancer「王よ、私たちはここに先ず居留地を築かねばなりませんが、ここは資源が乏し過ぎます」

 数体のElven Dragon Hawkが空を舞っていた。

Arthas「あれは……あれは、High Elfどもか! 奴らは一体ここで何をしているんだ?」
Blood Elf「Arthas殿、私たちはBlood Elf! 私たちは、Quel'thalasの霊魂に誓い、復讐を決意した。この死せる土地は浄化されるだろう!」
Arthas「Elfども、NorthrendはScourgeのものだ! ここに来るとは手痛い間違いを犯したな。奴らを殺せ!」

 地面からcrypt fiendが現れ、更にそれよりも大きな蜘蛛、Anub'arakがそれらを率いていた。

Anub'arak「進め、Scourgeのために! Ner'zhulの名のもとに奴らを殺せ!」
Arthas「何者だ……?」

 Anub'arakの配下が糸を吐いて敵を地面に縫いとめ、それに襲い掛かって敵を倒した。

Arthas「助かった、強力なる者よ」
Anub'arak「Death Knightよ、Lich Kingはあなたを助けるために私を遣わせたのだ。私はAnub'arak。Azjol-Nerubの古代の王」
Arthas「Anub'arak、あなたの支援に感謝するが、俺には挨拶の時間も惜しい。すぐにIcecrownにたどり着かねばならないのだ!」

 ArthasはBlood Elfの拠点を奪い取り、そこの資源をUndead軍のものとした。

Arthas「Elfどもはなんとも哀れなことだな。俺たちが容易く奴らの故国を破壊できたのも至極道理だ」

 Kaelがテレポートで現れた。

Kael'thas「残念ながら、その時私はそこに居なかった。久しぶりだな、Arthas」
Arthas「Kael'thas王子。逢うのは何時以来だろうな……今は君がこの集団を率いているのか?」
Kael'thas「少なくともこの集団だけは。ここに居たのは単なる偵察だけだ。Illidan殿の軍を打ち破るのはさらに難しいぞ」
Arthas「Illidanだと? 奴がこの侵略を指揮しているのか?」
Kael'thas「その通りだ。Arthas、私たちの軍の数は多い。彼らは今Icecrown Glacierへと進軍していることだろう。君は尊ぶべきLich Kingを救うことはできないだろうな。Quel'thalasを初めとする様々な侮辱的な振る舞いの代価を払うがいい」

 Kaelはテレポートして消えた。突如、Arthasを苦痛が襲った。

The Lich King「急げ! 敵が近づいて来ている! 時間が無い!」

 Lich Kingの声がArthasに届いた。

Anub'arak「Death Knightよ、大丈夫か?」
Arthas「俺の力は弱体化している。だが、大丈夫だ。奴は正しい。このままでは、俺たちは間に合わない!」
Anub'arak「取るべき道がもうひとつあるぞ、Death Knightよ。古代の砕かれた王国Azjol-Nerubが地下深くに存在している。暗黒時代に滅んだその王国を抜ければ、Icecrown Glacierへと直接至る近道となろう」
Arthas「他に選択のしようもないな。Anub'arak、先導してくれ」

 Azjol-Nerubへの道へと向かったが、その守護者は邪悪であり強力な存在であったが、それを倒さなくてはならなかった。

Anub'arak「近くの丘にDragonが住んでいる。そ奴は進軍に役立つArtifactを持っているかも知れぬ」

 古代竜Sapphironは近くの洞窟に居た。

Sapphiron「何故我が塒へとあえて入って来るのだ? 私の名はSapphiron。"呪文の紡ぎ手"(Spell-Weaver) Malygosに仕える存在! 理由を云え!」
Arthas「すまないな、偉大なる蜥蜴殿。俺たちは貴様とゆっくり話している時間の持ち合わせは無いんだ。貴様を殺し、幾世紀にも渡って溜め込んだArtifactを奪いに来た」
Sapphiron「正直者だな。いっそ晴れやかなくらいだ。だが、何者もこのSapphironに挑み生きていた者はおらぬ!」

 長い戦いの後、Blue Dragonflight SapphironはArthasとAbub'arakの前に倒された。

Arthas「まだこの程度の力は残っているか」

 Anub'arakが驚いたことに、Arthasは残った力を使い、SapphironをUndead Frost Wyrmへと変貌させた。

Anub'arak「素晴らしい。だが、あなたはエネルギーを節約せねばなりません。まだ先は長いのですから」

 ArthasとAnub'arakは洞窟へと向かい、その守護者であるDrakeを倒した。

Arthas「この洞窟を抜ければIcecrown Glacierへと本当にたどり着くのか?」
Anub'arak「Death Knightよ、確かなことなどなにもない。この廃墟は危険極まりなかろうが、その危険に応じた価値もあろう」
Arthas「……わかった。行くとしよう」


■Chapter.5: Dreadlord's Fall

 一方、Plaguelandに残ったSylvanasは、他のDreadlordに対する攻撃の準備を行っていた。

Sylvanas「Varimathras、よくやったわ。Detherocの砦へと確かに案内してくれた。だけど、あのHumanは何者なの?」
Varimathras「Detherocは最高位のHumanの指揮官を操っている。奴の名はGarabonかGilithosか、そんな名前の筈だ。Humanの名など、俺にはどれも同じに聞こえてな。それを殲滅する代わりに、Detherocは支配下に置いたというわけだ。奴らは砦の中で防備を固めている」
Sylvanas「あなたの兄弟は、私が考えているよりも賢明なようね。防衛はかなり強固だわ」
Varimathras「うむ。この僅かな兵数では、奴らの城壁への直接攻撃は自殺に等しいだろう」
Sylvanas「攻城戦をしようとは思わないわ」
Varimathras「ならば奴は後回しにして──」
Sylvanas「私の配下のBansheeならば、不運なHumanに憑依できるわ。そうして、門を内側から開けることができる」
Varimathras「俺たちがしようとしていることに奴が気づくまで、ほんの僅かな時間しかないのだぞ?」
Sylvanas「ええ、わかっているわ。それよりも更に迅速に攻撃を仕掛けるなら、Detherocは何が起こったか気づかないでしょうね」

 僅かに後、Footmanの警邏兵がSylvanasのBansheeと遭遇した。

Footman「構えろ!」

 BansheeはFootmanに憑依した。

Banshee「Humanよ、貴様らは誰に仕えているのだ?」
Footman「Dark Lady殿です。私はその方の意のままに」

 FootmanはDetherocによって支配されている砦へと戻った。

Necromancer「警邏兵が戻ったぞ! 門を開け!」

 門が開き、Sylvanasはその近くで待機していた。

Sylvanas「準備はいいか。この機を待っていた! 戦士たちよ、突撃せよ!」

 Detherocの兵士たちは眠りに落ちており、この間にSylvanasはふたつある拠点のひとつを破壊した。更に戦いは続き、DetherocもまたSylvanasの手にかかって倒された。GarithosはDetherocの支配下から脱した。

Garithos「呪文が途切れたのか? 悪夢は終わりを告げたのか?」
Sylvanas「立つがいい、Humanよ。争うつもりはないわ」
Garithos「何が望みだ? Elfの魔女よ」
Sylvanas「私たちには共通した敵がいるわ。最後のDreadlord Balnazzarはあなたの王国の首都を支配下においているわ。あなたが奴を殺すのを手伝ってくれるのなら、あなたが国を取り戻すことを手助けできる」
Garithos「貴様らを信用しろというのか? 貴様らは第一、私たちを追いやったScourgeの仲間ではないか!」
Sylvanas「最早そうではないわ。私の唯一の望みは復讐よ」
Garithos「わかった。軍隊を呼び集めよう。外で逢おう」

 Garithosは外へと出て行った。

Varimathras「どういうことだ。奴らに国土を返す意図などないのだろう」
Sylvanas「勿論返すことなどないわ。Humanたちは私の手段に過ぎない」
Varimathras「日毎、あなたは俺たちの眷属になっていくようだ」
Sylvanas「まあ、見ていなさい、Dreadlord」


■Chapter.6: A New Power in Lordaeron

 翌日、首都の近郊でSylvanasは攻撃の準備を整えていた。

Varimathras「首都の防御は並ではないぞ。Balnazzarは愚か者でもない。この戦いは消耗戦でのみ勝機を得られるだろう」
Garithos「何が問題だというんだ、Demonよ? まさか怖いのか?」
Varimathras「口ばかりが達者だな、狗め。貴様の強気は虚勢にしか見えんな……」
Sylvanas「止めなさい。その怒りはBalnazzarのために取っておきなさい。Garithos、あなたは背後から攻撃を。私は正面から攻撃を行うわ」
Garithos「勇猛な策略だな。首都を取り戻すためなら、望まれる限りどんな戦略も着実に実行しよう」
Sylvanas「状況を開始する。攻撃を始めよ」

 Sylvanasは無駄な戦いを避け、Balnazzarの元へと一直線に進んだ。

Sylvanas「見よ、貴様の兄弟の一人は私に仕え、もう一人は細切れに刻んでやったぞ。Balnazzar、貴様の運命はどうなると思う?」

 程なくBalnazzarの拠点全てを破壊した。

Sylvanas「これで終わりだ、Balnazzar。さて、Varimathras?」
Varimathras「なにか?」
Sylvanas「こ奴を殺せ」
Sylvanas「だが、俺は……。同族殺しはNethrezimでは禁じられている。確かに俺は裏切ったが、だが……」
Sylvanas「これは貴様の忠誠心を試すための最後の試練だぞ、Dreadlordよ。やるのだ」
Balnazzar「あなたにできるものか!」

 VarimathrasはBalnazzarを殺した。

Garithos「これで、あなたの目的は達成されたわけだ。あとは、お前たちのような惨めな獣どもがこの都市から去ってくれれば……」
Sylvanas「こいつも殺すのだ」
Varimathras「喜んで」

 VarimathrasはGarithosの頭上に火の雨を降らせて彼を殺した。幾体かのGhoulがその死体を食らった。

Sylvanas「首都は私たちのものとなった。だが、私たちは最早Scourgeではない。これより先、私たちはForsakenと名乗ろう。私たちはこの世界で、私たちが進むべき道を見出そう。Dreadlordよ……私たちの邪魔をする者全てを虐殺せよ」


■Chapter.7

・Part.1: Into the Shadow Web Caverns
 ArthasとAnub'arakとは、洞窟に向かって歩を進めていた。

Arthas「何時間もの間歩いているが、もっと急がねばならん。Lich Kingは俺たちが居なくては無防備のままだ」
Anub'arak「Death Knightよ、君と合流する以前に、私はIcecrownに多くの戦士たちを配置しておいたのだ。きっとそやつらが防衛線を長期にわたって維持してくれるだろう」
Arthas「ひとつ教えてくれ。お前の民は何処にいるんだ? Nerubianがいるべきではないのか? Undeadか或いは他の姿なのかもしれないが……」
Anub'arak「それは私も不思議に思っていた。おそらく、何者かが彼らを追い払ったに違いない」
Dwarf「それは我々だよ、腐敗した忌まわしき者どもめ! 我らは貴様らをずっと監視していたのだ!」
Arthas「Muradinの配下のDwarfどもか! 莫迦な……生き延びていただと?」
Dwarf「Arthasよ、貴様がMuradinを殺し、我らを腐敗の地に捨て去って以来、この忘れられた土地をあてどなくさ迷った。我らの指導者Baelgunは、生き延びるためにこの破壊された都市へと我らを率いたのだ。だが、貴様をここに迎え入れる理由等無い!」
Arthas「遊んでいる時間などないのだ! Sapphiron、攻撃しろ!」

 巨大なFrost WyrmがArthasの頭上を舞い、氷の吐息でDwarfを殺して門を破壊した。

Arthas「流石だな、Sapphiron。共に行ければいいのだが、地の底はお前の居るべき場所ではないからな」
Anub'arak「Lich Kingに残された時間は最早多くない。急がねばならん」

 Baelgunとその配下は、ArthasとAnub'arakが向かった洞窟に多数の罠を仕掛けた。

Dwarf「Khaz Modanの名において!」
Rifleman「Ghoulに照準を合わせろ! 突撃しろ! 奴らが渡る前に、橋を吹き飛ばせ!」
Arthas「なんだと? 奴らを止めろ──」
Baelgun「Muradinの敵討ちだ! 貴様らは橋を渡ることはできんぞ!」

 Dwarfの妨害によってArthasは違う道を探さざるを得ず、更にはNerubianに襲われた。

Anub'arak「この地下迷宮には他の道もある。違う道を探すこととしよう」
Arthas「このNerubianはお前の血族ではないのか。何故俺たちに敵対するんだ?」
Anub'arak「"蜘蛛戦争"(War of Spider)の間に倒れた多くの者たちがLich Kingに仕えるようになった。だが、死ななかった者たちもいる。愚かにも、その生き残った者たちは、ScourgeからNerubたちを解放しようとしているのだ」

 最終的に、Arthasは洞窟の最後にたどり着いた。

Baelgun「邪悪な王子よ、俺は貴様を忘れんぞ。貴様は哀れなMuradinを殺した!」
Arthas「最早済んだことだ」
Baelgun「裏切り者め。この扉の先には行かせんぞ。最近の地震で古代の恐るべき存在が氷の下から眼を覚ましたのだ。奴らがこないように封鎖してあるのだ」
Arthas「そうか、だが俺たちは必ずその扉の先へと行くぞ」

 Arthasは鍵を奪うためにBaelgunとDwarfの残りを殺した。

Arthas「酷い匂いだ。悪い予感がする」
Anub'arak「Dwarfの言葉が真実ならば、この闇の中で何かが待ち受けているのだろうな。この吹き抜けの回廊は、Nerubian帝国の中心部に至る筈だ。用心して行かねばならぬ」
Arthas「わかった。お前が先を行け」


・Part.2: The Forgotten Ones
 二人は王国の内部へと踏み入った。

Anub'arak「私たちは古代の王国へと踏み入った。Death Knight、心せよ。Dwarfたちが畏怖していたものが何処に潜んでいるのか知れぬのだから」

 幾つかの罠を越え、幾体かの生きたNerubianが居る氷の玄室にたどり着いた。

Nerubian「見よ! 裏切り者の国王殿だ!」
Arthas「俺のことか?」
Anub'arak「それは私のことだ、Death Knightよ。ここのNerubianどもは私たちを殺すまで手を止めないだろう!」

 全てのNerubianを倒すと、Dwarfに追われたCrypt Fiendを発見した。彼らはDwarfが扉を閉じた後、Nerubianによって捕らわれていた。

Crypt Fiend「ありがとうございます、偉大なる御方。反逆の蜘蛛どもは、すぐ近くの玄室に同じく我らの仲間を捕らえております。解放すれば彼らはあなたのご命令に従うことでしょう」

 ArthasとAnub'arakが玄室に近づくと、Nerubianが襲って来た。

Nerubian「侵入者だ、殺せ! Ner'zhulの下僕どもに死を!」
Anub'arak「私たちの子供たちは、卵のうの中に居る。そこからどれ程の数の邪悪な子らが孵化するのかはわからないが」
Arthas「確かに。奴らは確実に俺たちに敵対している! 卵のうを全て破壊するぞ!」
Anub'arak「子供を扉の中に封じてしまおう!」

 Nerubianを殺し、扉の向こうに子供を封じた後に王国の中を更に先へと進んだ。突如として触手が床から現れた。

Arthas「あれは一体なんだ?」
Anub'arak「Dwarfどもが畏怖していた存在だろう。単なる伝説に過ぎないと思っていたのだが」
Arthas「それは?」
Anub'arak「あれこそは、"無貌のもの"(the Faceless One)……。」

 触手と戦いながら、ArthasとAnub'arakは先へと進んだ。だが、Anub'arakは突如歩を止めた。

Anub'arak「そんな、莫迦な……あれは、"忘れさられし者"(A Forgotten One)。Death Knightよ、防御を固めるのだ! これ以上ないくらい必死で戦うのだ!」

 長い戦いの後、ArthasとAnub'arakは"忘れさられし者"を倒した。だが、すぐに"無貌の者"の触手が現れて彼らを追ってきた。

Anub'arak「あれを全て殺しつくすことは不可能だ! 急げ、Death Knight、上の階に行くぞ! 急ぐのだ!」


・Part.3: Ascent to the Upper Kingdom
 ArthasとAnub'arakは王国の上層へと登った。

Arthas「もう時間は殆ど無いぞ。出口まではまだ遠いのか?」
Anub'arak「もうすぐだ。私たちは王国の上層にたどり着いた。出口まで行けば、Icecrown Glacierへと着けるだろう。だが、隠された罠と落とし穴があるだろうな」

 突如として地震が起きた。

Arthas「身を守れ!」
Anub'arak「Arthas!」
Arthas「全ての通路が崩壊したぞ! 掘り進む時間など無い。急いで他の道を見つけねば! Anub'arakや他の者たちも無事だったのが不幸中の幸いか」

 Arthasはパズルのような回廊と苦難を越えた。Anub'arakがArthasの北側の壁を破壊して現れた。

Arthas「Anub'arak! 来てくれたか!」
Anub'arak「何故Lich Kingがあなたを選んだのかわかったように思う。並みの者ならば、この迷宮で死を迎えただろう。だが、まだ終わったわけではない」

 出口付近には数体の怪物が存在していた。Anub'arakの助力を受け、Arthasはそれを突破した。

Anub'arak「急げ……扉へ向かうのだ!」
Arthas「再び太陽を見られるとはな」
Anub'arak「Illidanとの本当の戦いはこれからなのだということを忘れるな。幸いなことに、暗い地の底を抜けた私たちの旅は、必要な時間を稼ぐに足りた」


■Interlude: Boiling Point

 数時間後、ArthasとAnub'arakはGlacierの拠点へと到着した。

Arthas「Anub'arak、ここだ。俺たちの軍は既に組織され、命令を待っている」
Necromancer「お待ちしておりました、Arthas王様。間に合いましてございます。IllidanのNagaとBlood Elfの軍は、Glacierへの道筋に配置されております」

 Arthasに突如幻視が襲いかかる。

Arthas「ぐううううぁぁぁぁぁ……」
The Lich King「Arthas、我が選びし者よ。遂に来たか」
Arthas「Lich King様ですか?」
The Lich King「我が牢獄、"凍てついた玉座"がひび割れた。そこから我がエネルギーが漏れ出している。そのため、お前の力が衰えたのだ」
Arthas「では、どうすれば?」
The Lich King「かつてRuneblade Frostmourneは同様に玉座の中に封じられていた。かつてそうであったように、Frostmourneを突き刺すのだ……そしてお前と我を繋げ。そうせよ。だが、これよりしばし脅威と直面することとなろう。我の創造主たるDemonlord Kil'jaedenは、我を破壊するために下僕を送り込んだ。もしも"凍てつきし玉座"にお前が至らねば、全ては無に帰するだろう。Scourgeはなされぬだろう。疾く急げ! 我はお前たち全てに力を与えるであろう」

 幻視は終わった。

Arthas「Lich King様からの幻視を受けた。俺の力が戻ったぞ! 成さねばならぬ事がある。遊びの時間は終わりだ……完全にな」


■Chapter Eight: A Symphony of Frost and Flame

 僅かの後、ArthasはBlood Elf、Naga、Illidanの拠点へと近づいていた。戦いが始まろうとしていた。

Arthas「Anub'arakよ、時間が無い。俺たちはIllidanよりも早く"玉座の玄室"(Throne Chamber)へと至らねばならん」
Anub'arak「"玉座の玄室"は谷の中心部の凍てついた山頂にある。四本の魔法の尖塔を活性化することでのみ、そこへの道は開かれるのだ。Illidanの軍はその内ふたつの近くに陣を張っている。我らはそれを押し返し、尖塔を活性化させる必要があるだろう」

 Nagaの拠点でIllidanは思案していた。KaelとVashjがIllidanの元へと訪れた。

Lady Vashj「瞑想中申し訳ございませぬ。妾たちの配下は、全て所定の位置につきましてございます」
Kael'thas「玄室が開けば、約定通り"凍てついた玉座"を破壊でるでしょう!」
Illidan「時は至った。本日をもってScourgeは終焉を迎えるだろう。Arthas、聞こえるか? 終焉をな!」

Arthas「Illidanは充分にScourgeを嘲弄した。奴に死をもってその借りを返す時が来た」

 ArthasとIllidanとは、尖塔を巡って争うこととなった。その戦いの中、ArthasとIllidanは邂逅した。

Illidan「よォ、Arthas」
Arthas「随分変わったな、Illidanよ。どうやらGul'danの頭蓋骨はお前には合わなかったようだな」

 同様に、ArthasとKaelも戦いの中邂逅した。

Arthas「お前が思いを寄せたJainaの心を俺が射止めたのを、未だ恨んでいるのか?」
Kael'thas「Arthas、君は私が愛していたもの全てを奪った。私に残されたのは、復讐だけだ」

 最終的にArthasは四つの尖塔の支配を奪った。Lich Kingの牢獄への門が開かれた。

Arthas「Anub'arakよ、完遂したぞ。"玉座の玄室"は開かれた! Scourgeの時代だ」

 Arthasがそこへと向かおうとすると、Illidanがそれを追った。

Arthas「"凍てつきし玉座"は俺のものだ、Demonよ。失せろ。この世界より去り、二度と戻るな。さすれば、命だけは助かろう」
Illidan「Arthas、オレはそれを破壊すると約定したのだ!」
Arthas「させぬ!」

 Arthasは騎馬から降りると、Frostmourneを抜いた。IllidanとArthasは離れて向かい合った。Illidanの翼が広がり、ArthasのRubebladeは光芒を増した。IllidanとArthasは刃を交わらせ、数合に渡って戦った。最終的にArthasのRubebladeがDemon Hunterの胸を裂いた。Illidanは地に伏して動かなくなった。


■Finale - Cinematic

 ArthasはLich Kingのもとへと氷で覆われた回廊を登って行く。Arthasが歩を進める度に、Muradin、Uther、Jainaといったかつて過去に関わりのあった者たちの声が響く。暫くすると、ArthasはLich Kingの捕らわれた氷で覆われた牢獄へとたどり着いた。そこには亀裂が入っていた。かつてLich KingはそこからFrostmourneを外へと解放した。

The Lich King「刃を返すのだ……運命の輪を完了しよう。解放せよ、我をこの牢獄から!」

 ArthasはFrostmourneで牢獄を切り裂いた。牢獄は粉々に砕け、Lich Kingの兜が地面に落ちた。Arthasは兜を拾い上げると、それをかぶった。

Arthas the Lich King「これより、我らはひとつとなった」

 氷で覆われた玄室の玉座に彼は腰を下ろした。

- End of the Frozen Throne -